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待合室づくり

クリニックのバリアフリー点検|車椅子・ベビーカー・杖・高齢の方が来院しやすい入口〜受付〜待合〜トイレ〜診察室のチェック表と声かけ例

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

夕方の明るい待合室。入口の段差に腰かけて靴をはく保護者の奥で、子どもが壁のテレビの水槽の画面へ駆けていく

※写真はイメージです。

クリニックのバリアフリーというと、スロープや多目的トイレのような大きな改装を思い浮かべがちです。けれども、車椅子の方、ベビーカーを押す保護者、杖をつく方、足腰の弱った高齢の方が実際に困るのは、入口の数センチの段差、受付カウンターの高さ、待合の椅子の間隔、トイレのドアの重さといった細かな部分であることが少なくありません。この記事では、患者さんが歩く順番である「入口→受付→待合→トイレ→診察室」に沿ったチェック表、すぐできる工夫と改装が必要な工夫の比較、スタッフの声かけ例、法令や条例を確かめる窓口までを、院長・事務長の方に向けてまとめました。

クリニックのバリアフリーは「設備」より先に「点検の順番」を決める

バリアフリーの見直しを始めるとき、いきなり業者に見積もりを頼むより、まず貴院の中を患者さんの目線で歩いてみることをおすすめします。どこで困るのかが分からないまま工事をすると、費用をかけた割に、肝心の困りごとが残ってしまうことがあるからです。

来院する人ごとに「困る場所」は違う

同じ段差でも、車椅子の方とベビーカーの方、杖の方では困り方が違います。点検の前に、どんな方がどこで困りやすいのかを整理しておくと、見落としが減ります。

来院する方困りやすい場所見るべき点
車椅子の方入口の段差、ドア、受付カウンター、トイレ、診察室の入口段差の有無、通れる幅、回転できる広さ、手の届く高さ
ベビーカーの保護者入口、待合での置き場、トイレ・おむつ替えの場所押したまま入れるか、置く場所があるか、子どもから目を離さずに済むか
杖・松葉杖の方段差、滑りやすい床、低い椅子、トイレ手すり、床の材質と濡れ、立ち上がりやすい椅子
足腰の弱った高齢の方玄関の靴の脱ぎはき、長い移動、呼び出しの聞き取り腰かける場所、休める椅子、表示の見やすさ、呼び出し方
見えにくい・聞こえにくい方受付、呼び出し、案内表示文字の大きさと色の差、音と表示の両方での呼び出し

点検は「患者さんが歩く順番」で行う

点検は、駐車場や歩道から入口、受付、待合、トイレ、診察室、会計、そして帰るまでの順に歩いて行います。可能であれば、院内にある車椅子を実際にスタッフが押して、もう一人が座ってみてください。ベビーカーがあれば同じように押してみます。図面で見ると問題のない幅でも、実際に押すとドアの開け閉めや曲がり角で手間取ることがよくあります。

ポイント

点検は、診療時間外に院長・受付・看護師または歯科衛生士など立場の違う2〜3人で行うと、見る場所が分かれて見落としが減ります。気づいた点はスマートフォンで写真を撮り、場所ごとに一覧にしておくと、あとで「すぐできること」と「改装が必要なこと」に仕分けしやすくなります。

入口〜受付の点検|段差・スロープ・ドア・カウンター

来院のしやすさを最も左右するのが入口です。どれだけ院内が整っていても、入口でつまずいてしまえば中に入れません。「クリニック 車椅子 対応」「ベビーカー 入れる クリニック」と検索して来院先を探す方がいるのも、入口に入れるかどうかが最初の関門だからです。

段差とスロープ

道路から入口までの間、入口の敷居、玄関マットの縁など、段差は思った以上に多くあります。数センチの段差でも、車椅子の前輪やベビーカーの車輪が引っかかり、杖の方はつまずく原因になります。

段差やスロープの勾配・幅には、法令や自治体の条例、国の設計標準で目安や基準が示されています。数値は建物の用途や規模、自治体によって扱いが異なるため、この記事では示しません。「段差 スロープ 医院」の具体的な寸法を決めるときは、設計者や自治体の建築担当窓口と一緒に一次資料を確認してください。

ドアと入口まわり

ドアは、車椅子やベビーカーの方が一人で開けられるかどうかがポイントです。開き戸は、押しながら・引きながら通り抜けるのが難しく、重いドアは高齢の方にも負担になります。

受付カウンター

受付カウンターは、立っている方を前提に高く作られていることが多く、車椅子の方からは書類の受け渡しや会話がしにくくなります。小さなお子さんを抱いた保護者も、カウンターの上で問診票を書くのは大変です。

カウンター自体を作り直すのは大がかりですが、受付スタッフがカウンターの外に出て、待合の椅子の横で受付をするだけでも解決できることは多くあります。受付の見直しについてはクリニックの受付を見直す記事でも詳しく整理しています。

待合〜トイレ〜診察室の点検|車椅子・ベビーカーの置き場と動線

入口を通ったあとは、院内で「どこで待つか」「どこを通るか」が問題になります。車椅子やベビーカーは人より場所をとるため、待合の椅子の並べ方ひとつで使いやすさが大きく変わります。

待合室

待合の床に共有のおもちゃやマットが広がっていると、杖や車椅子の方の通り道が狭くなり、子どもがつまずく原因にもなります。キッズスペースを置く場合は、通路と分けて配置することが大切です。キッズスペースの考え方は歯科・小児科のキッズスペースの記事も参考にしてください。

トイレ

トイレは、来院中に必ず使うとは限らないものの、「使えないかもしれない」と思うだけで来院をためらう方がいる場所です。

診察室・処置室

注意

すぐできる工夫と、改装が必要な工夫を分けて考える

点検で見つかった課題は、すべてを一度に直す必要はありません。費用や工期のかかり方で分けると、明日からできることがはっきりします。

課題すぐできる工夫(運用・小物)改装が必要な工夫
入口の段差入口外にインターホンや「お手伝いします」の案内、スタッフが迎えに出る運用スロープの設置、段差の解消、床の張り替え
重いドアドアクローザーの調整、混雑時はスタッフが開けておく引き戸や自動ドアへの交換
高い受付カウンタースタッフがカウンターの外へ出る、横に低い机とクリップボードを用意一部を低くしたカウンターへの改修
車椅子・ベビーカーの待つ場所椅子を1〜2脚外して場所をつくる、置き場を床のテープで示す待合のレイアウト変更、収納の造り付け
立ち上がりにくい椅子肘かけ付きの椅子を数脚入れ替える待合の椅子の総入れ替え
トイレ手すりの点検、鍵の交換、「車椅子では入れません」の事前案内広さの拡張、多目的トイレの新設
呼び出しが聞こえない番号の表示と直接の声かけを併用する呼び出しの表示装置の導入

改装の前に「事前に伝える」ことを整える

改装が必要な課題でも、すぐできることがあります。それは、貴院の状況を来院前に正しく伝えることです。ホームページや予約の案内、Googleのビジネスプロフィールなどに、次のような情報を載せておくと、患者さんは来院前に準備や相談ができます。

「対応しています」とだけ書くより、「入口に1段の段差があります。スタッフがお手伝いしますので、予約の際にお知らせください」のように、ありのままを書いた方が親切です。できないことを正直に書いておくことで、来院してから困る事態を防げます。駐車場から入口までの困りごとは、クリニックの駐車場の記事でも扱っています。

改装を考えるときに確かめたいこと

改装を検討するときは、建物がテナントか自己所有かで進め方が変わります。テナントの場合、入口や共用部分の工事にはビルの所有者や管理会社の了解が必要になることが多いため、早めに相談しておきましょう。また、改装の規模によっては法令や条例の手続きが関わることがあるため、適用される基準を設計者に最初に確認しておくと安心です。

スタッフの声かけ例と、よくある失敗

設備がすぐに整えられなくても、スタッフの声かけで来院しやすさは大きく変わります。大切なのは、手伝いを押しつけるのではなく、ご本人に「どうしてほしいか」を聞くことです。

場面ごとの声かけ例

場面声かけの例
入口で車椅子の方を見かけた「段差がありますので、お手伝いしてもよろしいですか。前と後ろ、どちらから押すと楽ですか」
ベビーカーの保護者が来院した「ベビーカーはそのままお入りください。こちらの壁ぎわに置いていただけます。お席からも見える場所です」
杖の方が受付に来た「おかけになってからで大丈夫です。問診票はこちらでお書きいただけます」
呼び出しに気づかないかもしれない方「お名前を呼ぶときに、私がこちらまでお迎えに来ますね」
トイレの場所を聞かれた「こちらです。中に手すりがあります。ご案内しましょうか」
診察室へ移動するとき「診察室までご一緒します。椅子へ移るときは、いつもどのようにされていますか」

声かけの最後は「〜しましょうか」「〜でよろしいですか」と、ご本人が選べる形で終えるのがコツです。「何かあればいつでもお声がけください」と添えて、見守るにとどめます。

よくある失敗

注意

ベビーカーの保護者が待合で過ごしやすいように

ベビーカーで来院する保護者は、子どもを見ながら受付を済ませ、名前を呼ばれるまで待つことになります。上の子がいる場合は、ベビーカーの赤ちゃんと、動き回る上の子の両方から目が離せません。待合で子どもが席の近くで落ち着いて過ごせると、保護者の負担は軽くなり、車椅子や杖の方が通る通路も保ちやすくなります。

テレビの大画面に、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
壁のテレビに映すため、待合の床に物を置かずに済みます

床に物を置かずに、子どもが過ごせる工夫|アートパーク

当社の「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。描くのは保護者の手元のスマートフォンなので、子どもは保護者の隣の席に座ったまま過ごせます。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、通路に物が散らばらず、消毒や片づけの手間もかかりません。テレビを壁に掛ければ床の場所をとらず、スタンド置きの場合も1畳未満に収まります(壁への取り付けは医院さまでの手配になります)。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場します。車椅子や杖の方が安心して通れる通路を保ちながら、子どもが待てる場所をつくる選択肢の一つとしてご検討ください。

法令・条例の確かめ方と、見直しチェックリスト

クリニックのバリアフリーには、法令や自治体の条例が関わることがあります。ただし、どの基準が適用されるかは、建物の用途・規模・新築か改修か・自治体によって異なります。この記事では断定を避け、確かめ先を整理しておきます。

確かめておきたい一次資料と窓口

確かめること主な資料・窓口
建物のバリアフリー基準「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)と関係する政省令。国土交通省のホームページで確認できます
設計上の考え方・寸法の目安国土交通省「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」
自治体独自の上乗せ基準都道府県・市区町村のバリアフリー条例や福祉のまちづくり条例。建築指導や福祉のまちづくりを担当する窓口
合理的配慮の考え方障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)。改正法により、2024年4月から事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられています。具体的な考え方は内閣府の資料で確認できます
院内掲示・ホームページの表現厚生労働省「医療広告ガイドライン」

改装を伴う場合は、設計者に適用される基準を確認してもらうのが確実です。運用面の配慮については、地域の障害者団体や自治体の相談窓口に意見を聞いてみるのも一つの方法です。院内掲示やホームページで「バリアフリー対応」とうたう場合は、実際の設備と食い違わないよう、表現を具体的にしておきましょう。

チェックリスト

まとめ

クリニックのバリアフリーは、大きな改装の前に、患者さんが歩く順番で院内を点検することから始まります。車椅子・ベビーカー・杖・高齢の方では困る場所が違うため、入口の段差やドア、受付カウンター、待合の置き場と椅子、トイレ、診察室を一つずつ確かめましょう。見つかった課題は、運用や小物ですぐできることと、改装が必要なことに分け、改装までの間は来院前に状況を正直に伝えることで困りごとを減らせます。スタッフの声かけは、ご本人に「どうしてほしいか」を聞く形を基本にします。法令や自治体の条例の扱いは建物ごとに異なるため、一次資料と設計者・自治体の窓口で確かめながら進めてください。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。