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待合室づくり

待合室のBGMの選び方|クリニック・歯医者の音量と曲調、削る音と会話のプライバシー、著作権で確認すること

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

夕方の明かりがともる医院の待合室。受付カウンターの手前に低いソファとスツールが並び、壁のテレビに海の中の画面が映っている

※写真はイメージです。

待合室のBGMは、開業時に「何となく」決めたまま何年も同じ、という医院が少なくありません。けれども、BGMは患者さんの緊張のほぐれ方、診療室から聞こえる音の感じ方、受付での会話の聞こえやすさにまで関わる、待合室の大事な要素です。この記事では、クリニックや歯医者の待合室のBGMを「何のために流すか」から整理し、曲調と音量の決め方、削る音や会話をやわらげる考え方とその限界、病院・医院でBGMを流すときに著作権の面で確認したいこと、テレビの映像との違いまでを、明日から使える手順とチェックリストでまとめました。院長・事務長の方に向けた内容です。

待合室のBGMは「何のために流すか」から決める

待合室のBGMを見直すとき、最初に「どんな曲を流すか」から考えると、好みの話で終わってしまいがちです。先に「BGMに何をしてほしいのか」を決めておくと、曲調・音量・スピーカーの位置・流し方が自然に絞り込めます。

BGMに期待できる役割は大きく4つ

役割こんな困りごとに決め方のポイント
静けさの緊張をやわらげる待合室がしんとしていて、患者さんが身構えている。咳払いや足音が目立つ主張しない曲調で、途切れずに流れていることが大切
診療室の音をやわらげる歯医者の削る音や器具の音が待合室まで届き、怖がる方がいるBGMだけでは消せない。音の出どころ側の対策と組み合わせる
会話を聞こえにくくする受付での症状の確認や会計のやりとりが、近くの席に聞こえてしまう受付まわりの音の重なり方が鍵。スピーカーの位置で効き方が変わる
医院の雰囲気をつくる内装や医院の方針と、待合室の空気が合っていない内装・照明と同じく「医院らしさ」の一部として選ぶ

多くの医院では、この4つが少しずつ重なっています。ただ、優先順位は医院によって違います。小児歯科なら「削る音」と「子どもの緊張」、内科や婦人科なら「会話のプライバシー」が上位にくるかもしれません。院長と受付スタッフで、貴院のBGMに一番期待したい役割を一つ決めてから、次の節に進んでください。

BGMを流さないという選択もある

BGMは必ず流さなければいけないものではありません。待合室が広く人が少ない時間帯が長い、呼び出しを音声で行っていて聞き取りやすさを最優先したい、耳の聞こえにくい高齢の患者さんが多いといった場合は、BGMを控えめにするか、時間帯によって止める方が合っていることもあります。「流す・流さない」も含めて、目的から考えるのが出発点です。

クリニック・歯医者のBGMの曲調の選び方

目的が決まったら、曲調を選びます。クリニックのBGMで大切なのは、「いい曲」であることより「気にならない曲」であることです。待合室では、患者さんは体調が悪かったり、これからの診療に緊張していたりします。耳に引っかかる音が少ないほど、BGMは役目を果たしやすくなります。

曲調を選ぶときの基準

見るところ待合室に向きやすい避けた方がよいことが多い
歌詞歌のない曲(インストゥルメンタル)日本語の歌詞の曲。言葉が耳に入り、呼び出しや会話と混ざる
テンポゆったりした一定のテンポ急に速くなる、盛り上がる曲。落ち着かない印象になる
音の強弱強弱の差が小さい曲静かな部分と大きな部分の差が大きい曲。音量を合わせにくい
楽器・音色ピアノ、アコースティックギター、弦楽器、自然音など柔らかい音色高く鋭い音が目立つ曲。器具の音や電子音と重なって聞こえることがある
なじみ聞き覚えがあっても主張しない編曲流行曲やCMで有名な曲。好みが分かれ、意識が向きやすい

診療科・時間帯で考える

同じ曲が短い間隔で繰り返されると、長く待つ患者さんや一日中その場にいるスタッフにとって負担になります。リストの長さにも気を配りましょう。スタッフが「この曲、もう聞き飽きた」と感じ始めたら、見直しの合図です。

ポイント

曲を選ぶときは、院長一人の好みで決めず、受付スタッフと歯科衛生士・看護師にも数曲を聞いてもらいましょう。「落ち着く」「気にならない」が多かった曲を残すと、医院全体で納得感のあるBGMになります。

音量とスピーカーの位置を決める手順

待合室のBGMで最も失敗が多いのは、曲よりも音量です。スタッフは一日中同じ空間にいるため、音量の感覚がだんだんずれていきます。「誰かが感覚で決める」のではなく、決め方の手順と基準を医院のルールにしておくと安定します。

音量を決める5つのステップ

  1. 患者さんの席に座る:受付の中ではなく、待合室の一番奥の席・受付に一番近い席・診療室の入口に近い席に、スタッフが実際に座って聞く
  2. 呼び出しを試す:いつもの声の大きさで呼び出しをして、一番遠い席で無理なく聞き取れるかを確認する。聞こえにくければBGMを下げる
  3. 受付の会話を試す:受付で普段の声量で会話をして、近くの席でどのくらい聞き取れるかを確かめる
  4. 混雑時に見直す:人が少ない時間帯と多い時間帯では聞こえ方が変わる。両方の時間帯で確認する
  5. 目盛りを記録する:決まった音量をアンプや機器の目盛りで記録し、写真に撮って受付に貼っておく

最後の「記録する」が意外と大切です。誰かが一時的に音量を変えたまま戻し忘れると、そのまま日常になってしまいます。開院前の準備の流れに「BGMの電源と音量の確認」を入れておけば、毎朝同じ状態から始められます。

スピーカーの位置で聞こえ方は変わる

スピーカーが1か所にしかないと、その近くの席だけがうるさく、離れた席では聞こえないという偏りが出ます。音量を上げて解決しようとすると、近くの席の患者さんの負担が大きくなります。複数のスピーカーで小さめの音を分散させる方が、待合室全体を均一にしやすくなります。

スピーカーの増設や配線工事が必要な場合は、内装や電気の業者に相談してください。待合室の音環境全体の見直しについては、歯科医院の待合室を見直すポイントでも、削る音・匂い・視線などと合わせて整理しています。

削る音と会話のプライバシー|BGMでできること・できないこと

歯医者のBGMを考えるとき、多くの院長が気にされるのが診療室から聞こえる削る音です。また、どの診療科でも、受付で話す症状や保険・会計の内容が周りの患者さんに聞こえてしまうことは気になる点です。BGMはどちらにも役立ちますが、万能ではありません。

「マスキング」の考え方

ある音が、ほかの音に重なることで聞き取りにくくなる現象を「マスキング」と呼びます。待合室にBGMが流れていると、診療室からの音や受付の会話が、BGMに紛れて目立ちにくくなります。完全に消えるわけではなく、「気にならない程度に紛れる」ことが目標です。

マスキングをねらうときに気をつけたいのは、音量を上げれば上げるほど効くわけではないという点です。BGMが大きすぎると、今度はBGMそのものがうるさくなり、呼び出しも聞き取りにくくなります。BGMの音量を上げる前に、音の出どころの側でできることから手を打つのが順番です。

BGMの前に打てる手

気になる音BGMの前に打てる手BGMが担うこと
削る音・器具の音診療室の扉を閉める運用、待合室に近いユニットの使い方の見直し、診療室の入口の位置と待合室の席の向き残った音を目立ちにくくする
受付での会話受付スタッフの声の大きさをそろえる、症状は問診票で書いてもらう、込み入った話は別室や受付の端で聞く近くの席に言葉として届きにくくする
呼び出しの声呼び出しの方法(声・番号表示など)を見直す。呼び出し時に読み上げる情報を必要最小限にする呼び出し以外の時間の静けさを埋める
注意

受付で使える声かけの例

子どもが診療室の音を怖がる場合の対応は、歯医者を怖がる子どもへの対応で詳しくまとめています。

病院・医院のBGMと著作権|確認したいことと相談先

待合室でBGMを流すときに必ず確認しておきたいのが、音楽の著作権と、使っているサービスの利用規約です。家庭で音楽を聞くのと違い、医院の待合室は不特定多数の患者さんが出入りする場所です。どの音源をどの方法で流すかによって、必要な手続きや守るべき条件が変わることがあります。

この記事では、個別のケースで手続きが必要かどうかを断定しません。流し方や契約の内容によって扱いが変わりうるため、下の表を手がかりに、必ず一次資料や窓口で確認してください。

音源ごとに確認したいことと確認先

音源・流し方確認したいこと主な確認先
市販のCD・購入した音楽データ医院の待合室で流すことについて、手続きや許諾が必要か著作権管理団体(JASRAC など)の窓口・案内ページ
個人向けの音楽配信サービス利用規約で、店舗や事業所など業務での利用が認められているか各サービスの利用規約・ヘルプページ
業務用のBGMサービス・有線放送契約に、著作権の手続きがどこまで含まれているか。利用できる場所や台数契約書・サービス提供会社の窓口
著作権フリー・ロイヤリティフリーの素材商用・業務での利用、繰り返し再生、店舗でのBGM利用が条件に含まれるか。表記の要否素材の利用規約(「フリー」の意味は素材ごとに違う)
ラジオ・テレビの音声受信したものをそのまま流す場合と、録音したものを流す場合の扱い文化庁が公開している著作権の解説、著作権管理団体の窓口

確認するときの進め方

  1. 今、待合室で流している音源と流し方(機器・サービス名・契約者)を書き出す
  2. 使っているサービスの利用規約を開き、業務利用・店舗での利用に関する項目を読む
  3. 分からない点は、著作権管理団体やサービス提供会社の窓口に、医院の待合室で流したいことを具体的に伝えて問い合わせる
  4. 回答の内容・日付・担当窓口を記録し、契約書類と一緒に保管する
  5. 判断に迷う場合は、著作権に詳しい弁護士などの専門家に相談する
注意

映像の上映とは別に考える

待合室のテレビで映像を流す場合は、BGMとは別に、映像そのものの権利や配信サービスの規約についての確認が必要になります。映像には音楽が含まれていることも多く、「BGMの手続きをしているから映像も大丈夫」とは限りません。反対に、映像の扱いを確認していても、別途流しているBGMの確認が済んでいるとは限りません。音と映像は、それぞれ分けて確認するのが安全です。テレビで何を流すかの考え方は、待合室のテレビで何を流すかで整理しています。

BGMと映像の組み合わせ方、よくある失敗とチェックリスト

待合室にテレビやモニターがある医院では、BGMと映像の音がぶつかることがよくあります。テレビの音声とBGMが同時に流れていると、どちらも聞き取りにくく、呼び出しの声はさらに埋もれます。待合室の「音の主役」を一つに決めておくと、全体がすっきりします。

音の主役を決める

組み合わせ向いている医院気をつけたいこと
BGMのみ落ち着いた雰囲気を重視する医院、会話のプライバシーを優先したい医院音量の管理と、同じ曲の繰り返しによる飽き
BGM+音を消した映像待ち時間を目で楽しんでもらいたい医院字幕や文字が多い映像は、高齢の方には読みにくいことがある
映像の音声のみ院内案内や健康の解説など、音声で伝えたい内容がある医院呼び出しとの重なり。映像の音声の権利や規約の確認

耳ではなく目で楽しむ時間|アートパークという選択肢

子ども連れの患者さんが多い歯科・小児科では、待ち時間に子どもが退屈して声が大きくなり、待合室の音環境が乱れることもあります。当社が提供している「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、消毒や片づけの手間もかかりません。描いた作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはありません。BGMで落ち着いた音環境を整えたうえで、子どもには画面を「見て楽しむ」時間を用意する、という組み合わせ方の一つとして検討いただけます。

待合室のテレビの大画面で、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
アートパークの実際の画面

よくある失敗

チェックリスト

まとめ

待合室のBGMは、「どんな曲を流すか」より先に「何のために流すか」を決めることが出発点です。クリニックや歯医者の待合室では、歌のない落ち着いた曲を、呼び出しが無理なく聞こえる音量で、複数のスピーカーから分散させて流すのが基本になります。削る音や受付の会話はBGMで目立ちにくくできますが、消せるわけではないため、扉の運用や問診票、話す場所の工夫と組み合わせましょう。病院・医院でBGMを流す際の著作権や配信サービスの規約については、この記事では断定せず、一次資料や著作権管理団体・サービスの窓口、必要に応じて専門家に確認してください。テレビの映像はBGMとは別に権利を確認し、待合室の音の主役を一つに決めておくと、患者さんにもスタッフにも過ごしやすい待合室に近づきます。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。