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待合室づくり

歯科医院の待合室を見直すポイント|削る音・匂い・視線・子ども連れ・高齢者・掲示物を「お金をかけずにできる順」に

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

床に何も置かれていない明るい歯科医院の待合室。壁にテレビの画面が1台かかっている

※写真はイメージです。

歯科医院の待合室は、ほかの診療科の待合室と少し事情が違います。診療室から聞こえる削る音や吸引の音、消毒や薬剤の匂い、ユニットや器具が目に入る位置関係。どれも毎日そこで働くスタッフには「当たり前」になっていますが、患者さんにとっては、診療の前に不安を大きくする材料になりがちです。この記事では、歯医者の待合室で見直したいポイントを「音・匂い・視線・子ども連れ・高齢者・掲示物」に分けて整理し、改装や大きな買い物をしなくてもできることから順に並べました。院長・事務長の方が、明日の朝礼でそのまま使えるよう、手順・声かけの例・チェックリストもまとめています。

歯科医院の待合室は「不安が育ちやすい場所」と考える

歯科医院の待合室の工夫というと、内装の色やソファ、おしゃれな照明を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろん見た目も大切ですが、歯科の待合室でまず向き合いたいのは「これから何をされるのだろう」という患者さんの不安です。待っている間に、その不安が少しずつ大きくなるのか、少し落ち着くのか。待合室の役割はそこにあります。

歯科ならではの「不安の材料」

歯科の待合室には、ほかの診療科にはあまりない不安の材料がそろっています。

どれも「完全になくす」ことはできません。目指すのは、患者さんが待合室で受け取る刺激を減らすこと、そして受け取ったとしても「大丈夫そうだ」と感じられる手がかりを用意することです。

見直しは「お金をかけずにできる順」に

待合室の見直しは、いきなり改装の話から始めると、費用も時間もかかって結局手が止まりがちです。次の4段階で考え、上から順に手をつけるのがおすすめです。

段階内容の例費用・手間の目安
1. 運用と声かけドアを閉めるタイミング、受付での話し方、呼び出し方、清掃の順番費用はほぼかからない。決めて守るだけ
2. 配置と整理椅子の向きを変える、掲示物を減らす、物を床から上げる費用はほぼかからない。半日程度の作業
3. 小物・備品の追加のれんやパーテーション、BGMの機器、ひざ掛け、手すりの付いた椅子少額の購入。スタッフで設置できる範囲
4. 機器・工事ドアや壁の防音、換気設備、受付カウンターの改修、映像機器の設置見積もりが必要。業者の手配や休診日の作業

実際には、1と2だけでかなりの部分が変わります。3と4は、1と2をやってみて「それでも残る課題」に絞って検討すると、無駄な出費を避けられます。

ポイント

見直しの前に、スタッフ以外の人の感想を聞いておくと効果的です。スタッフの家族や知人に、受付から待合室の席まで実際に歩いて座ってもらい、「聞こえた音」「感じた匂い」「目に入ったもの」を書き出してもらいましょう。毎日いる人には気づけない点が、ほぼ必ず出てきます。

音|削る音・吸引の音を「聞こえ方」から見直す

歯医者の待合室で、患者さんの不安に最も直接つながりやすいのが音です。削る音そのものは診療に欠かせないため、「音を出さない」ではなく「待合室にどう届いているか」を見直します。

まず、どこから音が来ているかを確かめる

診療時間中に、待合室の各席に順番に座って耳を澄ませてみてください。同じ待合室でも、診療室の入口に近い席と遠い席では聞こえ方がまったく違います。音の通り道は、たいてい次のどれかです。

お金をかけずにできる音の対策

BGMは「音を隠す」より「気をそらす」

BGMを流すと削る音が気になりにくくなる、という考え方はよく聞きます。ただ、大きな音量で削る音を消そうとすると、待合室全体が騒がしくなり、受付での会話も聞き取りにくくなります。BGMは小さめの音量で、会話の邪魔をしない曲調を選び、「耳がそちらに向く」程度にとどめるのが無難です。店舗や施設でBGMを流す場合は、利用する音源やサービスの利用条件(著作権の扱い)を確認しておきましょう。

よくある失敗

匂いと視線|消毒の匂い、診療室・受付からの見え方

匂いは「足す」より「元を減らす」

消毒薬や薬剤の匂いは、歯医者が苦手な方にとって「あの場所に来た」と感じさせる合図になりがちです。芳香剤やアロマで匂いを上書きしたくなりますが、香りの好みは人によって違い、強い香りで気分が悪くなる方もいます。妊娠中の方や香りに敏感な方もいらっしゃるため、まずは匂いの元を減らす方向で考えます。

香りを使う場合は、ごく控えめにし、受付の近くや出入口だけにとどめるなど、逃げ場のある使い方にしましょう。換気設備の能力や運用は建物によって違うため、設備の点検や改修が必要かどうかは、専門の業者に相談してください。

視線①:待合室から「見えなくてよいもの」

待合室の席に座って、目に入るものを確かめます。ユニットに座っている患者さん、トレーに並んだ器具、使用済みの器具、血のついたガーゼなどは、見せる必要のないものです。

視線②:患者さん同士・受付からの「見られている感じ」

歯科では、治療の前後で口元を気にしている方や、腫れや麻酔で表情が気になる方もいます。向かい合わせに並んだ席は、知らない人と目が合いやすく、落ち着かない原因になります。壁に向かう席、横並びの席、少し離れた一人がけの席など、座る場所を選べるようにしておくと、それぞれが過ごしやすい場所を見つけられます。

受付での会話も「聞こえる」ことによる視線の一つです。治療内容や費用、次回の処置の話が待合室に聞こえていると、話している本人も、聞いてしまったほかの患者さんも落ち着きません。

受付での声かけの例

個人情報の取り扱いについては、個人情報保護委員会が公表している医療・介護関係事業者向けのガイダンスなど、一次資料を確認したうえで院内のルールを決めてください。

子ども連れと高齢者|同じ待合室で両方が過ごしやすくする

歯科医院の待合室には、乳幼児を連れた保護者から、杖をついた高齢の方まで、幅広い年代の患者さんが同時にいます。子どもの声が気になる方もいれば、静かすぎて子どもが少し声を出すだけで肩身が狭くなる保護者もいます。どちらかに我慢をお願いするのではなく、「場所」と「時間」を分けて考えます。

子ども連れと高齢の方で違う「困りごと」

場面子ども連れの保護者高齢の方
座る子どもを見守れる位置に座りたい。ベビーカーを置く場所がほしい低すぎるソファは立ち上がりにくい。肘掛けや手すりがほしい
待つ子どもがじっとしていられず、周りに気をつかう呼び出しが聞き取りにくい、表示が見えにくい
動くトイレやおむつ替えのときに荷物と子どもをどうするか段差やマット、床に置かれた物につまずきやすい
不安子どもが診療を嫌がって泣かないか、ほかの患者さんの迷惑にならないか治療の説明が分からないまま進まないか、費用はどのくらいか

お金をかけずにできる工夫

子どもが歯医者を怖がる理由や、診療室での声かけについては、歯医者を怖がる子どもへの対応で詳しくまとめています。

共有のおもちゃを置かずに、子どもの気をそらす|アートパークという選択肢

子ども連れの待合室では、「音や雰囲気から子どもの気をそらすものがほしい、でも共有のおもちゃは消毒や片づけが大変」という悩みがよく聞かれます。当社が提供している「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないので、消毒や片づけの手間はかかりません。

テレビは壁掛けなら床面積を使わず、スタンド置きでも1畳未満に収まります(壁への取り付けは医院さまでのご手配です)。床に物を増やさずに済むため、高齢の方の通り道を狭めることもありません。描いた作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはありません。その時間に居合わせた子どうしで一緒に泳ぐため、待っている間の楽しみは「また描きたい」になります。上の表でいえば「4. 機器」にあたる選択肢なので、1〜3を進めたうえで、子ども連れの課題が残るときに検討していただくのがよいと考えています。

テレビの大画面の水槽を、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
子どもが描いた魚が大画面の水槽を泳ぐ、アートパークの実際の画面

掲示物|不安を増やす貼り紙を外し、知りたいことを残す

歯科医院の待合室の壁は、気づくと貼り紙でいっぱいになりがちです。治療の案内、自費診療のポスター、注意書き、休診のお知らせ、啓発ポスター。一枚ずつは必要に見えても、全体として「何を伝えたいのか分からない」状態になり、肝心のお知らせが読まれなくなります。

「残す・まとめる・外す」で仕分ける

仕分け対象の例扱い方
残す診療時間・休診日、緊急時の連絡先、トイレや出口の案内見やすい位置に、大きめの文字で
まとめる治療メニューの紹介、予防や歯みがきの説明冊子やファイル、ホームページに集約し、壁には案内だけ残す
外す期限の切れたお知らせ、色あせた貼り紙、手書きの注意書きの重ね貼りその日のうちに外す

歯科ならではの「怖い掲示物」に注意する

むし歯や歯周病の進行を示す写真やイラストは、予防の大切さを伝える意図で貼られていることが多いものです。ただ、待合室でこれから治療を受ける方、とくに子どもにとっては、不安を大きくする材料にもなります。進行した症例の写真は、説明の場面で必要な人に見せる資料にまわし、待合室の壁には「できること」「こうすれば防げること」を前向きに伝える内容を選ぶのがおすすめです。

「携帯電話の使用禁止」「走らないでください」など禁止の言葉が並ぶ貼り紙も、数が多いと待合室全体が冷たい印象になります。本当に必要なものだけに絞り、「通話はお外でお願いします」のようにしてほしいことを書く形にすると、受け取る側の印象がやわらかくなります。

注意

院内の掲示物やパンフレットでも、治療の効果を断定する表現や、ほかの医院と比べて優れていると読める表現には注意が必要です。医療に関する広告や表示のルールは、厚生労働省の医療広告ガイドラインなどの一次資料で確認し、判断に迷うものは専門家に相談してください。

お金をかけずにできる順の見直し手順と、チェックリスト

ここまでの内容を、実際に進める手順に落とし込みます。一度に全部やろうとせず、週に一つずつでも、順番を守って進める方が定着します。

見直しの進め方(4週間の例)

時期やること担当の例
1週目スタッフ以外の人に待合室を体験してもらい、音・匂い・視線・掲示物の気づきを書き出す院長・事務長
2週目運用と声かけを決める(ドアの開け閉め、呼び出し方、受付での話し方、換気のタイミング)。朝礼で共有する受付リーダー・歯科衛生士
3週目配置と整理(席の向き、子ども連れと高齢の方の席、掲示物の仕分け、床の物をなくす)。休診日の半日で行うスタッフ全員
4週目1〜3週目で残った課題を書き出し、小物・備品の追加や機器・工事が必要かを判断する院長

見直しのあとは、患者さんの様子や、受付で聞こえてくる一言に気を配りましょう。「前より落ち着いて待てた」「子どもが嫌がらなくなった」といった反応や、反対に新しく出てきた困りごとを、月に一度スタッフで共有すると、次の手が見えてきます。待ち時間そのものを短くする工夫については、歯科・小児科の待ち時間対策もあわせてご覧ください。

チェックリスト

まとめ

歯科医院の待合室は、削る音や吸引の音、消毒の匂い、診療室や受付からの視線によって、診療の前に不安が大きくなりやすい場所です。見直しは改装から始めるのではなく、ドアの開け閉めや呼び出し方、受付での話し方といった運用と声かけ、次に席の向きや掲示物の整理といった配置の見直しから、お金をかけずにできる順に進めましょう。子ども連れと高齢の方は困りごとが違うため、席や時間帯を分けて考えると両方が過ごしやすくなります。1〜2の段階をやってみて残った課題にだけ、備品や機器、工事の費用をかける。この順番を守ることが、無理なく続く待合室づくりの近道です。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。