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子育て世代の患者対応

予防接種で泣く子への対応|来院前の案内から接種前後の声かけ、保護者・きょうだいへの配慮まで

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

夕方の明るいクリニックの待合室。壁のテレビに海の中の画面が映り、女の子が画面に向かって駆け寄っていく

※写真はイメージです。

予防接種の日、子どもが泣くのはごく自然なことです。泣くこと自体をなくすのは難しくても、スタッフの準備と声かけしだいで、子どもと保護者の「つらかった日」の印象は変えられます。この記事では、予防接種で泣く子への対応を、小児科・クリニックのスタッフ側の目線で整理しました。来院前の案内、待合室での過ごし方、接種の前・最中・後の声かけ例、保護者への声かけ、きょうだい連れへの配慮、よくある失敗までを、院長・事務長が明日のミーティングでそのまま使える形でまとめています。なお、接種の手技や医学的な判断は医師の領域です。本記事は医学的な効果を示すものではなく、受付・看護・待合室の運用についての考え方としてお読みください。

予防接種で泣く子への対応は「場面ごと」に分けて考える

小児科で注射に泣く子への対応というと、接種の瞬間の声かけに目が向きがちです。しかし、子どもの不安は接種の瞬間だけでなく、家を出る前から始まり、待合室で大きくなり、帰り道まで続きます。対応を「場面ごと」に分けると、誰が・いつ・何をするかを決めやすくなり、スタッフによって対応がばらつくのを防げます。

場面ごとの担当と、やることの整理

場面子ども・保護者の状態主な担当やること
来院前保護者が「どう伝えればいいか」迷っている。子どもは何も知らない、または怖い話を聞いている受付・Webサイト持ち物・服装・伝え方の案内、予約時の確認
受付〜待合室見慣れない場所で緊張が高まる。待つほど不安がふくらむ受付待ち時間の見通しを伝える、過ごし方の用意、呼び出しの工夫
接種前診察室に入って身構える。保護者も緊張している看護師・医師名前を呼んであいさつ、短く何をするかを伝える、姿勢の確認
接種中泣く、体をよじる。保護者は申し訳なさを感じやすい看護師・医師手早く、落ち着いた声で。保護者にも声をかける
接種後泣きやまない、または気持ちが切り替わる途中看護師・受付がんばりを具体的にほめる、院内での待機と様子の確認、次回の案内

表の「主な担当」は一例です。貴院の人員に合わせて担当を決めておきましょう。特に「待合室で泣き出した子に誰が声をかけるか」は決まっていないことが多く、受付が忙しい時間帯ほど誰も動けなくなりがちです。

目標は「泣かせない」ではなく「つらさを長引かせない」

スタッフ全員で共有したいのは、泣くことを失敗とみなさないという考え方です。「泣かせないように」と目標を置くと、泣いた時点で子どもも保護者もスタッフも「うまくいかなかった」と感じてしまいます。目標は、待ち時間に不安をふくらませないこと、接種を手早く終えること、終わったあとに気持ちを切り替えるきっかけをつくること。そう置き直すだけで、声かけの言葉も変わってきます。

来院前の案内|保護者に伝えておきたいこと

子どもへの伝え方は、保護者がいちばん迷うところです。来院前に医院から短い案内を届けておくと、保護者は準備がしやすくなり、当日の受付での説明も減らせます。予約確認のメールやLINE、Webサイトの「予防接種を受ける方へ」のページなど、貴院がすでに使っている手段に載せるのが手軽です。

案内に入れておきたい項目

接種後の待機時間や体調確認の基準は、医師の判断と貴院の手順によって決まります。案内文を作るときは、医師に内容を確認してもらってから使ってください。予防接種そのものの情報は、厚生労働省やお住まいの自治体が公開している資料もあわせて確認し、保護者にもそうした一次情報を案内すると安心です。

「だまさない伝え方」を医院からすすめる

保護者の中には、子どもを嫌がらせないように「今日はお買い物だよ」と言って連れてくる方もいます。気持ちは分かりますが、着いてから分かると子どもは裏切られたように感じ、その場で強く抵抗することがあります。医院の案内では、責める調子にならないよう気をつけながら、次のような伝え方を例として示すとよいでしょう。

保護者向けの伝え方の例(案内文に載せる場合)

「痛くないよ」と言い切るのは避けた方が、次の来院につながりやすくなります。実際に痛かったとき、「言われたことと違った」という記憶が残るためです。

予約時に確認しておくと当日が楽になること

電話やWebで予約を受けるときに、何人で来院するか、きょうだいも一緒か、同じ日に複数の接種があるかを確認しておくと、当日の段取りが立てやすくなります。前回の接種でとても怖がった、泣き方が激しかったといった情報を保護者が伝えてくれた場合は、カルテや申し送りに残しておき、当日の担当者が事前に目を通せるようにしておきましょう。

予防接種の待ち時間、子どもの過ごし方を整える

予防接種で子どもが泣く場面のうち、医院の工夫がいちばん効きやすいのが待合室です。何もすることがないまま待っていると、子どもは診察室から聞こえる泣き声や、白衣の人の出入りに意識が向き、不安がふくらんでいきます。待ち時間を短くする工夫と、待つ時間の過ごし方を用意する工夫の両方から考えます。

待ち時間を短く感じてもらう運用

待ち時間の短縮については、歯科・小児科の待ち時間対策でも予約の組み方や呼び出しの工夫を詳しく扱っています。

待合室で気持ちをそらせるものを用意する

子どもの気持ちをほかのことに向けられるものがあると、待ち時間の過ごし方は大きく変わります。絵本やぬりえ、壁の飾りなど、医院によってさまざまな工夫がありますが、予防接種の時期は待合室が混み合うこともあるため、衛生面や片づけの手間も考えて選ぶ必要があります。

用意するものよいところ気をつけたいこと
絵本・ぬりえ手軽に始められる。年齢に合わせて選べる共有のものは汚れや消毒の手間がかかる。ぬりえは持ち帰り用にするなど運用を決める
共有のおもちゃ小さな子が夢中になりやすい消毒・片づけの手間が大きい。取り合いが起きることがある
壁の掲示・飾り触らずに楽しめ、衛生面の心配が少ない一度見ると飽きやすい。定期的な入れ替えが必要
テレビ・映像離れた席からでも見られる。共有物に触れない音量や内容への配慮。見るだけで終わりやすい
保護者のスマートフォン子どもが慣れている。院内の共有物が増えない動画の音が周りに響くことがある。イヤホンの案内や音量のお願いを掲示する

待合室全体のつくり方や、感染対策を踏まえたキッズスペースの考え方は小児科の待合室づくりにまとめています。

注意

接種前・接種中・接種後の声かけ例

予防接種での子どもへの声かけは、スタッフによって言い方がばらつきやすい部分です。全員が同じ言葉を使う必要はありませんが、「言ってよいこと」「避けたいこと」の方向性はそろえておきましょう。以下は、看護師や受付が使える声かけの例です。年齢や子どもの様子に合わせて言い換えてください。

場面別の声かけ例

場面声かけの例避けたい言い方
呼び出し「○○ちゃん、こんにちは。お部屋に一緒に行こうね」無言で手を引く、名字だけで事務的に呼ぶ
接種前の説明「腕にちっくんするよ。数を10数える間に終わるからね」「痛くないよ」と言い切る、長々と説明する
気持ちを受け止める「怖いよね。そう思うのは当たり前だよ」「怖くない怖くない」「泣かないの」
接種中「上手に止まってるね」「もうすぐ終わるよ」「動いたら危ないでしょ」と強い口調で言う
終わった直後「終わったよ!最後までがんばったね」「ほら、全然痛くなかったでしょ」
泣きやまないとき「いっぱいがんばったから、涙が出ちゃうよね」「もうお兄ちゃんなんだから」と比べる
帰るとき「今日は○○ちゃん、えらかったです。また会おうね」「次も泣かないでね」

ほめるときは「結果」より「行動」を言葉にする

「泣かなかったね、えらいね」というほめ方は、泣いた子にとっては「自分はえらくなかった」というメッセージにもなりえます。ほめるのは結果ではなく、その子がとった行動です。「お部屋まで自分で歩いてきたね」「腕を出してくれたね」「最後まで座っていられたね」のように、泣いていてもできたことは必ずあります。それを具体的に伝えると、子ども本人にも、そばで見ている保護者にも届きます。

年齢に合わせた伝え方の違い

接種のときの姿勢や、保護者に子どもをどう抱いてもらうかは、安全に関わる部分です。医師・看護師が院内で決めた方法に沿って、毎回同じ手順で保護者に伝えられるようにしておきましょう。

保護者への声かけと、きょうだい連れへの配慮

子どもが泣いている間、保護者は「迷惑をかけている」「しつけができていないと思われていないか」と感じていることが少なくありません。子どもへの声かけと同じくらい、保護者への声かけが大切です。

保護者にかけたい一言

最後の一言で次回の接種の時期に触れておくと、保護者が予定を立てやすくなります。予約の取り方や案内の方法を一緒に伝えると、次の来院の段取りもスムーズです。接種のスケジュールそのものは医師の説明や母子健康手帳、自治体の案内に沿って伝え、受付が独自の判断で時期を決めないよう注意しましょう。

きょうだい連れのときの段取り

きょうだいを連れて来院する保護者は、接種を受ける子の対応と、待っている子の見守りを同時に抱えています。特に、接種を受けない上の子が診察室についてくるのか、待合室で待つのかは、事前に決めておくと当日の混乱が減ります。

きょうだい連れの段取りの例

接種を受けない上の子が「自分は何ももらえない」と感じると、それが不機嫌や泣き出しにつながることもあります。待っていた子のがんばりにも目を向けると、保護者の負担は軽くなります。子連れで来院する保護者への配慮全般については、歯医者に子連れで来る保護者への対応でも、見守りや声かけの決め方を扱っています。

テレビの大画面を、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
アートパークの実際の画面

待ち時間に「描いて待つ」という過ごし方|アートパーク

当社が提供している「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。医院に共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、消毒や片づけの手間もかかりません。描いた作品は約5分(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはなく、その時間に居合わせた子どうしの絵が一緒に泳ぎます。予防接種の待ち時間に「何を描こうか」と親子で考える時間ができれば、診察室の様子から気持ちをそらすきっかけの一つになりうると考えています。もちろん泣かなくなることを約束するものではなく、ここまでの声かけや段取りと組み合わせて使うものです。

よくある失敗と、スタッフで共有したいチェックリスト

最後に、予防接種で泣く子への対応でつまずきやすい点をまとめます。どれも悪気があって起こるものではなく、忙しい時間帯に起こりやすいものです。ミーティングで「うちではどうか」を一つずつ確認してみてください。

よくある失敗

チェックリスト

まとめ

予防接種で泣く子への対応は、接種の瞬間だけでなく、来院前の案内、待合室での過ごし方、接種前後の声かけ、保護者ときょうだいへの配慮までを一続きで考えると整えやすくなります。泣くことを失敗とみなさず、「つらさを長引かせない」ことを目標にスタッフで共有しましょう。「痛くないよ」と言い切らず、短く正直に伝え、泣いていてもできた行動をほめる。保護者には「大丈夫ですよ」と先に声をかけ、待っていたきょうだいにも目を向ける。医学的な判断や接種の手順は医師が決めたものに沿い、そのうえで受付と待合室の運用を少しずつ見直していくことが、子どもと保護者にとって「また来られる医院」につながっていきます。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。