医療事務の採用で失敗しないために|クリニックの受付スタッフ求人が集まらないときの業務の切り分け・求人票・面接・トライアル勤務・入職後の立ち上げ
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医療事務の採用は、「求人を出しても応募が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」という二つの悩みがセットになりがちです。受付は患者さんが最初と最後に接する場所で、会計・電話・予約・レセプトまで抱えるため、一人欠けるだけで院内が回らなくなります。この記事では、クリニックの医療事務・受付スタッフ採用について、募集の前にやる業務の切り分け、求人が集まらないときの求人票の見直し、面接で確かめること、トライアル勤務の設計、入職後30日の立ち上げまでを、質問例と表、チェックリストで整理しました。院長・事務長の方に向けた内容です(歯科衛生士の採用は別の記事で扱っています)。
医療事務の採用は「どの業務を任せるか」の切り分けから始める
医療事務の採用でつまずく医院の多くは、募集を出す前に「この人に何をしてほしいのか」を言葉にしていません。「受付さんが一人辞めたので、同じような人を」という募集のしかたでは、求人票の中身があいまいになり、応募者も自分に合う仕事かどうか判断できません。まずは受付まわりの業務を書き出し、誰が何を担うのかを決めるところから始めます。
受付まわりの業務を書き出す
クリニックの医療事務・受付の仕事は、ひとまとめに「受付」と呼ばれていても、中身はかなり幅があります。次の表のように分けてみると、未経験の方に任せられる仕事と、経験や知識が必要な仕事が見えてきます。
| 業務のまとまり | 主な中身 | 未経験の方の立ち上がり |
|---|---|---|
| 窓口対応 | 来院時の受付、保険証や診察券の確認、問診票の案内、呼び出し | 手順を覚えれば早く任せやすい |
| 電話・予約 | 予約の受付・変更、問い合わせへの回答、折り返しの連絡 | よくある質問の回答例があれば任せやすい |
| 会計 | 会計、次回予約の案内、領収書・明細書の発行、レジ締め | レジ締めは慣れるまで二人で確認したい |
| レセプト・請求 | レセプトの点検、返戻への対応、月初の請求業務 | 知識と経験が必要。時間をかけて育てるか経験者に任せる |
| 院内の環境づくり | 待合室の片づけ、掲示物の更新、備品の発注 | 手順と頻度を決めれば任せやすい |
表をつくったら、今いるスタッフがどこを担っていて、辞めた人がどこを担っていたのかを当てはめます。そうすると、「欲しいのはレセプトまでできる経験者なのか」「窓口と電話を任せられる人なら未経験でもよいのか」がはっきりします。
「経験者だけ」にこだわらない募集の組み立て
レセプトまで一人でこなせる経験者だけを条件にすると、応募の母数はどうしても小さくなります。レセプトは今いる経験者や院長・事務長が引き続き担い、新しく入る方には窓口・電話・会計を任せる、という切り分けにすれば、未経験の方や子育て中で短時間を希望する方にも門戸を広げられます。どちらが貴院に合うかは、今のスタッフの経験と、教える時間をどれだけ取れるかで決まります。
業務の切り分けは、採用のためだけでなく、入職後の教え方にもそのまま使えます。表の「主な中身」を、入職後に覚えてもらう順番に並べ替えておくと、そのまま立ち上げの計画表になります。
医療事務の求人が集まらないときの求人票の見直し方
「医療事務の求人を出しても集まらない」というとき、原因は求人票そのものにあることが少なくありません。応募者は複数の求人を見比べて、「ここなら働けそう」と思えたところに応募します。給与の額だけでなく、働く場面が想像できるかどうかで差がつきます。
求人票で伝わりにくい項目と書き方の例
| 項目 | 伝わりにくい書き方 | 伝わりやすい書き方の例 |
|---|---|---|
| 仕事内容 | 受付・医療事務全般 | 窓口での受付と会計、電話での予約受付が中心。レセプトは経験者が担当し、希望があれば少しずつ覚えられます |
| 勤務時間 | シフト制 | 午前のみ・午後のみなど、選べる時間帯を具体的に書く。診療終了後の片づけと会計締めにかかる時間の目安も書く |
| 休み | 週休2日 | 休診日と、それ以外に何曜日を休みにしやすいか。長期休暇の取り方 |
| 職場の様子 | アットホームな職場です | 受付の人数、一緒に働くスタッフの構成、混み合う時間帯と、その時間の動き方 |
| 教え方 | 未経験歓迎 | 最初の1か月で何を覚えてもらうか、誰が教えるか、マニュアルの有無 |
「アットホーム」「未経験歓迎」のような言葉は、どの求人にも書かれているため、見比べたときに印象に残りません。その代わりに、貴院の受付で実際に起きていることを具体的に書くと、応募者は自分が働く姿を想像しやすくなります。
クリニックの受付求人で書いておきたいこと
- 混む時間帯と、その時の体制:「夕方は小学生のお子さん連れが多く、受付2名で対応します」など
- 子ども連れの患者さんの多さ:小児科や子どもの患者さんが多い歯科では、子どもへの声かけや待合室の様子も仕事の一部になります
- 電話の量と内容:予約の電話が多いのか、問い合わせが多いのか
- 使っているシステム:電子カルテやレセプトコンピューター、予約システムを使っているかどうか(製品名まで書く必要はありません)
- 働き方の選択肢:短時間勤務、扶養の範囲内での勤務、学校行事に合わせた休みの相談ができるかどうか
- 求人票の労働条件は、職業安定法にもとづいて明示が求められる項目があります。賃金・労働時間・試用期間などの書き方は、ハローワークや厚生労働省の案内で最新の内容をご確認ください。
- 性別や年齢を限定する書き方は、法令で原則として認められていません。「女性スタッフ活躍中」のような表現も、限定と受け取られないか見直しましょう。
- 実際の条件と違うことを書くと、入職後のトラブルや早期退職の原因になります。良く見せるより、正確に書くことを優先してください。
出す場所を一つに絞らない
求人の出し先は、ハローワーク、求人サイト、医院のホームページの採用ページ、院内の掲示、今いるスタッフからの紹介などがあります。応募者の多くは、求人サイトで見つけた後に医院のホームページを見に来ます。ホームページに採用ページがない、あっても情報が古いという状態だと、そこで応募をやめてしまう方もいます。採用ページには求人票より詳しい一日の流れや、受付の写真を載せておくと安心材料になります。
受付スタッフの面接で確かめること|質問例と見るポイント
受付スタッフの面接では、医療事務の知識よりも「この人と一緒に受付を回せるか」を確かめることが大切です。知識は入職後に教えられますが、患者さんへの接し方や、忙しいときの動き方は短期間では変わりにくいからです。
面接で使える質問の例
| 確かめたいこと | 質問の例 | 聞きながら見るところ |
|---|---|---|
| 働き方の希望 | 週に何日、何時から何時まで働けそうですか。急なお休みが必要になりそうな時期はありますか | 医院のシフトと合うか。無理をして合わせていないか |
| 人と接する仕事の経験 | これまでの仕事で、お客様や利用者の方から何か頼まれて、うまく対応できたことを教えてください | 具体的な場面を自分の言葉で話せるか |
| 忙しいときの動き方 | 電話が鳴っていて、窓口にも人が並んでいるとき、どう動きますか | 正解よりも、周りに声をかける、優先順位を考えるといった姿勢 |
| 困った場面への対応 | 待ち時間が長いと不満を言われたら、最初に何と声をかけますか | 相手の気持ちを受け止める言葉が出てくるか |
| 覚え方 | 新しい仕事を覚えるとき、どんな方法が自分に合っていますか | メモを取る、聞いて覚えるなど。教え方を合わせる参考にする |
面接で聞かないこと
家族構成、本籍・出生地、住まいの環境、支持する政党や宗教など、本人の適性や能力と関係のない事項は、面接で聞かないようにします。厚生労働省が公正な採用選考の考え方を示していますので、面接を担当する人は事前に一度目を通しておくと安心です。「お子さんは何歳ですか」という質問も、働き方の相談のつもりでも、聞き方によっては差別につながるおそれがあります。働ける曜日や時間帯を本人から話してもらう聞き方に置き換えましょう。
受付のスタッフにも同席してもらう
院長や事務長だけで面接すると、実際に一緒に働く受付スタッフとの相性が分からないままになります。面接の後半に受付のリーダーが10分ほど同席し、仕事の様子を説明したり、応募者からの質問を受けたりすると、お互いに入職後のイメージが具体的になります。同席したスタッフの感想を聞いてから判断する、という流れにしておくと、入職後に「なぜこの人を採ったのか」という不満も出にくくなります。
トライアル勤務と見学で、入職後のずれを減らす
面接だけでは分からないことを確かめるために、職場見学やトライアル勤務を取り入れる医院もあります。応募者にとっても、受付の忙しさや雰囲気を自分の目で見てから決められるため、入職後の「思っていたのと違う」を減らせます。
見学とトライアル勤務の違い
| 方法 | やること | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 職場見学 | 診療時間中に受付の様子を見てもらい、スタッフから仕事の説明をする | 患者さんの個人情報が見えない位置で見てもらう。見学の時間を短く区切る |
| トライアル勤務 | 半日から数日、実際の業務の一部を一緒に行う | 業務をしてもらう以上、労働として扱い賃金を支払う。雇用契約や保険の扱いは事前に確認する |
トライアル勤務の扱いは、労働基準法などの関係法令に沿って決める必要があります。条件の決め方に迷う場合は、社会保険労務士や労働基準監督署に相談してください。
トライアル勤務で任せる仕事の例
- 来院した患者さんへのあいさつと、問診票の案内(説明はスタッフが横で補う)
- 待合室の整頓、掲示物の確認
- 電話の取り次ぎ(予約の受付は既存スタッフが対応し、横で聞いてもらう)
- 会計の流れを見てもらい、最後に気づいたことを話してもらう
大切なのは、本人に「できるかどうか」を試すだけでなく、医院の側も「この人にどう教えればよいか」を見ることです。終わった後に、本人とスタッフの両方から感想を聞く時間を取りましょう。
見学やトライアル勤務の最後に、「今日見て、不安に思ったことはありますか」と聞いてみてください。入職前に不安を言葉にしてもらえれば、教え方やシフトの組み方で先に手を打てます。
入職後30日の立ち上げと、受付の負担を減らす環境づくり
せっかく採用できても、最初の1か月で「ついていけない」と感じて辞めてしまうと、また募集からやり直しです。入職直後の立ち上げを計画として決めておくことが、採用の仕上げになります。
最初の30日の計画の例
| 時期 | 覚えてもらうこと | 医院がすること |
|---|---|---|
| 1週目 | あいさつ、窓口での受付、問診票の案内、待合室の整頓 | 教える担当を一人決める。一日の終わりに5分の振り返り |
| 2週目 | 電話の取り次ぎ、予約の受付、よくある質問への回答 | 電話の回答例をまとめた紙を渡す。迷ったら保留して聞いてよいと伝える |
| 3週目 | 会計、次回予約の案内、領収書の発行 | 会計は慣れるまで二人で確認する。レジ締めは一緒に行う |
| 4週目 | 混雑時の動き方、子ども連れの方への対応 | 院長または事務長と面談し、困っていることを聞く |
この順番は一例です。業務の切り分けの表をもとに、貴院の受付に合わせて並べ替えてください。入職後の定着については、スタッフ定着の仕組みの記事でも面談の型や業務の見える化を取り上げています。
よくある失敗
- 教える人が日によって違う:人によって言うことが違い、新人が混乱する。最初の1か月は担当を一人に決める
- マニュアルがなく「見て覚えて」になる:完璧なマニュアルでなくてよいので、電話の回答例と会計の手順だけでも紙にする
- 人手が足りないので、すぐに一人で受付を任せる:一人で対応できない場面でつまずき、自信をなくす原因になる
- 面談をしない:困りごとを言い出せないまま退職を決めてしまう
受付の「本来の仕事以外」を減らす
受付スタッフが辞める理由には、窓口や電話そのものより、その合間に入ってくる細かな仕事の多さが含まれていることがあります。たとえば子どもの患者さんが多い医院では、待合室のおもちゃの片づけや消毒、ぐずる子への対応、絵本の補充などが受付の仕事になりがちです。どれも大切な仕事ですが、忙しい時間帯に重なると負担が一気に増えます。採用の面接で「混雑時の動き方」を聞くのと同じように、医院の側でも受付に集まっている仕事を見直しておくと、新しく入る方の負担を最初から軽くできます。受付まわりの動線や会計の流れについては、クリニックの受付を見直す記事も参考にしてください。

おもちゃを置かない待合室という選択肢|アートパーク
当社が提供している「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、受付スタッフが片づけや消毒をする手間はかかりません。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。描いた作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはないため、受付で作品の管理をする必要もありません。子ども連れの待ち時間の過ごし方を整えることが、受付の負担を軽くするきっかけの一つになりうると考えています。
採用の流れを見直すチェックリスト
最後に、募集から入職後までの流れを一覧にしました。すべてを一度に整える必要はありません。できていない項目から一つずつ取り組んでみてください。
- 受付まわりの業務を書き出し、誰が何を担うかを決めている
- 新しく入る方に任せる業務と、任せない業務を分けている
- 求人票の仕事内容に、窓口・電話・会計・レセプトのどこを担うかを書いている
- 勤務時間は「シフト制」だけでなく、選べる時間帯を具体的に書いている
- 混む時間帯とその時の体制を書いている
- 最初の1か月で何を覚えるか、誰が教えるかを書いている
- 性別・年齢を限定する表現になっていないか確認している
- ホームページの採用ページの情報が新しい
- 面接の質問を事前に決め、適性と関係のない事項を聞かないようにしている
- 面接に受付のスタッフが同席する時間がある
- 見学やトライアル勤務の扱い(賃金・契約)を事前に確認している
- 入職後30日の計画と教える担当が決まっている
- 電話の回答例と会計の手順を紙にしている
- 入職1か月の時点で面談をしている
- 受付に集まっている細かな仕事を見直している
まとめ
医療事務の採用は、募集を出す前の業務の切り分けで半分が決まります。どの業務を任せるかを決めれば、求人票に書くべき中身がはっきりし、未経験の方や短時間を希望する方にも声が届くようになります。求人が集まらないときは、仕事内容・勤務時間・混む時間帯・教え方を具体的に書き直し、ホームページの採用ページも整えましょう。面接では知識より接し方と忙しいときの動き方を確かめ、受付スタッフにも同席してもらいます。見学やトライアル勤務で入職後のずれを減らし、最初の30日は教える担当と順番を決めて立ち上げます。受付に集まっている細かな仕事を減らすことも、採用した方に長く働いてもらうための大切な準備です。