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待合室づくり

眼科の待合室づくり|散瞳後の見えにくさ・高齢者の段差と照明・検査待ち・子どもの付き添いまで、見えにくい人を前提にした工夫

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

夜の医院をガラス越しに見た様子。明るい待合室の壁に大きな画面があり、親子が座って画面を見ている

※写真はイメージです。

眼科の待合室は、ほかの診療科と比べて「見えにくい状態の人が長く過ごす場所」だという点で特別です。もともと視力が落ちている高齢の方、散瞳の目薬をさしてまぶしさや見えにくさを感じている方、視力検査を控えて緊張しているお子さんと付き添いの保護者。こうした方々が、検査と診察のあいだを何度も行き来しながら待っています。この記事では、眼科の待合室を見直すときの考え方を、散瞳後の配慮、段差と照明、検査待ちの伝え方、掲示物の文字サイズと呼び出し方、子どもの受診と付き添いの順に整理しました。大がかりな改装をしなくても始められる工夫を中心に、院長・事務長の方が明日から使えるチェックリストと声かけ例を添えています。

眼科の待合室が他の診療科と違うところ

眼科の待合室づくりを考えるとき、最初に押さえておきたいのは「待合室にいる人の多くが、ふだんより見えにくい状態にある」ということです。内科や歯科の待合室であれば、掲示物を読んだり、呼び出しの表示を確認したり、段差に気づいたりすることは、患者さん自身でおおむねできます。眼科ではそこが前提になりません。待合室の工夫は、見えにくい人を基準にして考えると、結果としてすべての人にとって過ごしやすい場所になります。

待合室にいる人と、それぞれが困ること

待っている人困りやすいこと待合室でできる配慮
高齢の方段差や床の色の切り替わりに気づきにくい。小さな文字が読めない。呼び出しの声が聞き取りにくい段差の目立たせ方、明るさのむら解消、大きな文字の掲示、近くでの声かけ
散瞳中の方まぶしい。近くの文字やスマートフォンの画面が見えにくい。足元が不安まぶしさを避けられる席、受付近くの席、声での案内、帰り道の注意の説明
検査を何度も受ける方今どの段階なのか、あとどれくらいかが分からない。何度も呼ばれて席を立つ検査の流れの説明、検査室に近い席、席を移る回数を減らす動線
子どもと保護者子どもが退屈する。保護者が検査に付き添う間、きょうだいの居場所がない子どもが過ごせる場所、付き添いの流れの事前説明、きょうだい連れへの配慮

散瞳後の見えにくさに配慮した席と案内

眼底の検査などで散瞳の目薬を使うと、しばらくの間まぶしさを感じたり、近くのものにピントが合いにくくなったりします。どのくらい続くか、どんな見え方になるかは目薬の種類や人によって違うため、説明の内容は医師の判断に沿って院内で統一しておきます。そのうえで、待合室の側でできる配慮は少なくありません。

「散瞳を待つ席」を決めておく

散瞳の目薬をさしてから効くまでの間、患者さんは待合室で過ごすことになります。このとき、窓際の直射日光が入る席や、照明の真下の席はまぶしく感じやすい場所です。窓から離れた、光が直接目に入りにくい一角を「目薬のあとにお待ちいただく席」として決めておくと、案内がしやすくなります。受付や検査室から近い場所にしておけば、呼ばれたときの移動も短く済みます。

散瞳中は「読ませる案内」より「声の案内」

散瞳中の方は、手元の紙の説明や、スマートフォンでの順番確認が難しくなることがあります。目薬をさす前に、この先の流れと所要時間の目安を口頭で伝えておきましょう。

声かけの例

「この目薬が効くまで、こちらの席で少しお待ちください。効いてくると、まぶしく感じたり、手元が見えにくくなったりします。お呼びするときはスタッフがお席までまいりますので、そのままお待ちいただいて大丈夫です。」

帰り道の注意は、来院前と会計時の二回伝える

散瞳の検査をした日は、見え方が戻るまで車やバイク、自転車の運転を控えていただくよう案内するのが一般的です。ただ、検査当日に初めて知ると、患者さんは帰りの手段に困ってしまいます。予約の時点や前回の診察時に「散瞳の検査がある日は、運転してのご来院を控えてください」と伝え、当日の会計時にももう一度確認しておくと安心です。案内の具体的な内容は、医師の方針に合わせて決めてください。

注意

高齢の方が安全に過ごせる段差・照明・座席

眼科の待合室では、つまずきや転倒を防ぐ配慮が他の診療科以上に大切になります。見えにくさがある方にとって、わずかな段差や床の色の切り替わりは気づきにくいものです。大きな改装をしなくても、点検と小さな工夫で減らせる危険はたくさんあります。

場所ごとの点検表

場所確認することお金をかけずにできること
入口・玄関段差、雨の日の床のすべりやすさ、自動ドアの開くタイミング段差の端に目立つ色のテープを貼る、雨の日は吸水マットを置き端がめくれていないか確認する
受付前カウンターの高さ、杖を立てかける場所、筆記用具の見やすさ杖を掛けるホルダーを置く、記入用の太いペンと拡大鏡を用意する
待合の座席椅子の高さ、肘掛けの有無、通路の幅肘掛けのある椅子を検査室側に寄せる、通路に荷物やマガジンラックを出さない
照明明るい所と暗い所のむら、足元の影、照明のまぶしさ切れた照明やちらつく照明をすぐ交換する、暗い通路にスタンドライトを足す
トイレ・通路手すり、ドアの開け方の分かりやすさ、表示の大きさ表示を大きな文字と絵で貼り直す、扉の取っ手の色を目立たせる

「明るくする」より「むらをなくす」

照明は、ただ明るくすればよいわけではありません。明るい場所から急に暗い場所に入ると、目が慣れるまで足元が見えにくくなります。待合室と検査室の間の通路、トイレの前など、明るさが切り替わる場所を中心に見直しましょう。散瞳中の方にとっては強い光が負担になるため、まぶしさを抑えつつ、場所による明るさの差を小さくすることが目標になります。照明器具の交換や配置の変更を検討する場合は、内装や電気工事の専門家に相談してください。

座席は「どこに座れば呼ばれやすいか」で配置する

見えにくい方や耳の聞こえにくい方は、呼び出しを聞き逃さないよう、受付や検査室の近くに座りたがる傾向があります。その席が足りないと、入口付近に立って待つ方が出て、通路がふさがります。検査室側に優先席を設け、「お声かけが必要な方はこちらへ」と案内しておくと、スタッフも誰に気を配ればよいかが分かりやすくなります。

眼科の待ち時間は「流れ」を伝えると変わる

眼科の待ち時間は、受付から会計までの間に「視力・眼圧などの検査」「散瞳を待つ時間」「診察」「追加の検査」などが入るため、患者さんから見ると長く、先が読みにくいものです。何度も呼ばれては待合室に戻ることを繰り返すと、「いつ終わるのか分からない」という不安が待ち時間の不満につながります。

受付で「今日の流れ」を一言で伝える

受付の段階で、その日の大まかな流れを伝えておくだけで、患者さんの受け止め方は変わります。

声かけの例

「今日は、最初に視力などの検査をして、そのあと目薬をさして少しお待ちいただき、先生の診察になります。何度かお呼びしますが、順番に進んでいますのでご安心ください。」

流れを書いたカードを渡す場合は、散瞳後も読めるよう大きな文字で項目を絞ります。検査のたびに「今どこまで進んだか」を一言添えると、さらに安心です。

待ち時間を短くする工夫と、待つ時間を楽にする工夫

待ち時間への対策は、「実際の待ち時間を短くする」ことと、「待っている時間の感じ方を変える」ことの二つに分けて考えると整理しやすくなります。前者は予約枠の組み方や、検査と診察の順番の見直しなど、運用の改善が中心です。後者は、流れの説明や、座り心地、待合室で過ごす時間の過ごし方の工夫です。両方の考え方は「歯科・小児科の待ち時間対策」でも詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。

掲示物の文字サイズと呼び出し方の工夫

眼科の待合室では、掲示物と呼び出しの二つが「見えにくい人に伝わるか」を最も問われる場面です。

掲示物は「大きく・少なく・はっきり」

待合室の壁には、診療時間の変更、検査の案内、注意事項などがつい増えていきます。眼科ではとくに、小さな文字の掲示がたくさんある状態は、読まれないだけでなく、大事なお知らせを埋もれさせてしまいます。

掲示物で検査や治療の効果を説明する場合は、表現が誇張や断定にならないよう注意が必要です。医院の広告や院内掲示に関する表現のルールは、厚生労働省の医療広告ガイドラインなどの一次資料で確認してください。

呼び出し方の比較

呼び出し方よいところ眼科で気をつけたいこと
声で呼ぶ見えにくい方にも伝わる。設備がいらない耳の聞こえにくい方が聞き逃す。氏名を呼ぶ場合は、ほかの患者さんに聞こえることへの配慮が要る
番号を画面に出す氏名を出さずに済む。待合室全体に一度に伝わる散瞳中や視力の低い方は番号が読めないことがある。声と組み合わせる前提で使う
スタッフが席まで行く確実に伝わる。移動の介助もできるスタッフの手間がかかる。どの方に席まで行くかを決めておく
呼び出しの端末を渡す待合室の外で待てる振動や音に気づきにくい方もいる。端末の消毒と回収の手順が要る

多くの眼科では、一つの方法に頼らず組み合わせるのが現実的です。たとえば「番号を表示しつつ声でも呼ぶ」「散瞳中の方と優先席の方は、スタッフが席まで行く」と決めておけば、見えにくい方を取りこぼしにくくなります。氏名で呼ぶか番号で呼ぶかは、個人情報の取り扱いに関わります。院内の方針を決め、個人情報保護委員会などが出している医療・介護関係事業者向けの資料を確認したうえで運用してください。

よくある失敗

子どもの受診と視力検査の付き添い

眼科には、学校や園の健診で指摘を受けた子ども、近視の経過を見ている子ども、目のけがや充血で受診する子どもなど、子どもの患者さんも少なくありません。子どもの眼科受診では、本人が検査に集中できるかどうかと、付き添う保護者の負担の両方に目を向ける必要があります。

視力検査の前に、子どもに「何をするか」を伝える

子どもにとって、暗めの検査室で機械をのぞき込んだり、片目を隠して記号を答えたりするのは、初めてだと不安なものです。検査の前に、待合室で保護者と一緒に「これから何をするか」を簡単に伝えておくと、検査室に入ってからのつまずきを減らせます。

声かけの例

「これから、絵や丸い形のどこが空いているかを当てるクイズをするよ。分からなかったら『分からない』って言えば大丈夫。痛いことはしないからね。」

付き添いの流れを保護者に先に伝える

保護者が検査室に一緒に入るのか、待合室で待つのか、散瞳の目薬を使うのかなど、付き添いの流れは医院によって違います。受付の時点で「お子さんの検査中は、お母さんは検査室の中で一緒にいていただけます」「目薬のあとは、こちらの席で一緒にお待ちください」のように伝えておくと、保護者も次の行動を予想できます。きょうだいを連れて来院した場合に、待合室で待つきょうだいをどう見守るかも、あらかじめ決めておきたい点です。

待合室での過ごし方|アートパークという選択肢

子どもが待合室で退屈すると、保護者は周りの高齢の患者さんに気をつかい、落ち着いて待てなくなります。かといって、共有のおもちゃや絵本は消毒や片づけの手間がかかり、待合室の通路に物が増えることにもつながります。

当社の「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、消毒や片づけの手間がかからず、通路に物を増やすこともありません。描いた作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはありません。

ただし眼科の場合、散瞳中のお子さんは手元のスマートフォンが見えにくく、描きにくいことがあります。目薬の前の待ち時間や、付き添いで来たきょうだいが過ごす時間など、使う場面は医院の方針に合わせて考える必要があります。検査の前後に画面を見ることについても、医師の考えに沿って案内してください。こうした点も含めて、実際の画面を貴院の待合室でお試しいただけます。

テレビの大画面を、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
待合室のテレビに映る「すいぞくかん」の実際の画面

よくある失敗と、見直しチェックリスト

眼科の待合室の見直しでつまずきやすいのは、「スタッフの目線で見て問題ない」と判断してしまうことです。スタッフは院内の配置を知っており、見え方にも問題がないことが多いため、患者さんがどこで困っているかに気づきにくいのです。

よくある失敗

患者さんの目線で点検する方法

月に一度、スタッフが交代で「患者さん役」になり、入口から受付、待合の席、検査室、トイレ、会計までを歩いてみましょう。薄い色のサングラスをかけてまぶしさや見えにくさを想像する、荷物を持って杖をついたつもりで歩く、待合室の一番奥の席から掲示を読んでみる、といった方法で、ふだん気づかない点が見えてきます。気づいた点は一覧にして、お金をかけずにできることから順に直していきます。

チェックリスト

まとめ

眼科の待合室は、見えにくい状態の人が長く過ごす場所です。散瞳後のまぶしさを避けられる席と声での案内、高齢の方がつまずかない段差と照明の点検、検査と診察の流れを先に伝える声かけ、大きく少なくはっきりした掲示物、見えにくい方を取りこぼさない呼び出し方の組み合わせ。そして、視力検査に臨む子どもへの事前の説明と、付き添う保護者への流れの案内。どれも大がかりな改装をしなくても始められることばかりです。まずはスタッフが患者さん役になって院内を歩き、見えにくい人の目線で気づいたことから、一つずつ直していきましょう。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。