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開業準備

クリニックの看板の決め方|ファサード・袖看板・自立看板・野立て・窓サインの役割分担と、載せられる事項・発注前チェック

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

待合室のベンチで、母親のスマートフォンを子どもと一緒にのぞき込み、魚の絵に色をぬっている様子

※写真はイメージです。

クリニックの看板は、開業準備の中でも「デザイン会社や看板業者に任せれば何とかなる」と後回しにされがちな項目です。けれども看板は、医院の前を通る人に存在を知らせ、初めて来る患者さんを入口まで迷わず案内する、毎日働き続ける道具です。種類ごとに役割を決めずに発注すると、どの看板にも同じ情報を詰め込んで、遠くからは何も読めない、ということが起こります。この記事では、ファサード・袖看板・自立看板・野立て看板・窓サインの役割分担、遠くから読める情報量の決め方、医療広告ガイドラインで載せられる事項の確認、屋外広告物の許可、発注前のチェックまでを、開業を控えた院長・事務長の方に向けて整理しました。

クリニックの看板は種類ごとに役割が違う

クリニックの看板を考えるときは、まず「誰が、どこから、どんな状態で見るのか」を種類ごとに分けて考えます。車で通り過ぎる人と、駐車場から歩いてくる患者さんとでは、見ている時間も知りたいことも違います。役割を分けておくと、それぞれの看板に載せる情報を絞りやすくなり、全体として伝えたいことが漏れなく届きます。

主な看板の種類と役割

種類主に見る人役割載せる情報の中心
ファサード(建物正面の看板)医院の前を通る人、到着した患者さん「ここが○○クリニックだ」と分かってもらう医院名、診療科名、ロゴ
袖看板(壁から突き出す看板)建物と平行に歩く人、テナントビルを探す人道を進む方向からでも見つけてもらう医院名、診療科名、階数
自立看板(敷地内のスタンド型・ポール型)車で来る人、駐車場を探す人入口・駐車場の場所を知らせる医院名、診療科名、駐車場の案内
野立て看板(離れた場所に立てる看板)幹線道路を走るドライバー、最寄り駅の利用者医院の存在を知ってもらい、方向を伝える医院名、診療科名、方向と距離の目安
窓サイン(ガラス面のシート)入口の前まで来た人入る前の不安を減らす診療時間、休診日、予約の有無、電話番号

この表のように、遠くから見る看板ほど情報は少なく、近くで見る看板ほど情報を多くできます。診療時間の細かな表を野立て看板に載せても、走っている車からはまず読めません。反対に、入口の窓サインは、立ち止まって読んでもらえる場所なので、休診日や予約の有無を丁寧に書く意味があります。

立地によって「主役の看板」が変わる

同じクリニックでも、立地によって力を入れるべき看板は変わります。ロードサイドの戸建てなら、車からの見え方を決める自立看板と、少し離れた交差点での野立て看板が主役になりやすいでしょう。駅前のテナントビルなら、ビルの袖看板や館内の案内板、エレベーター前の表示が患者さんの迷いを減らします。商業施設内の医療モールでは、施設側の案内サインのルールが決まっていることも多いため、まず管理者に確認します。

開業の流れの中で看板をいつ決めるかは、クリニック開業のスケジュールで全体の工程と合わせて確認しておくと、内装工事や告知の時期と食い違いにくくなります。

遠くから読める情報量の決め方

看板でいちばん多い失敗は、伝えたいことを全部載せてしまうことです。医院名、診療科名、診療時間、電話番号、駐車場、ホームページのアドレス、院長の名前……。どれも大切な情報ですが、一枚に詰め込むほど一つひとつの文字は小さくなり、遠くからは何も読めなくなります。

「見る距離」と「見ていられる時間」で優先順位をつける

情報の量は、看板を見る人がどれくらい離れていて、どれくらいの時間それを見ていられるかで決まります。歩いている人は立ち止まって読めますが、車のドライバーは前方を見ながら一瞬だけ目を向けるのが精いっぱいです。次の順で優先順位をつけると、載せる情報を選びやすくなります。

遠くから見る看板には最初の段だけ、近くで見る看板には三段目まで、というように、看板の種類と見る距離に合わせて段を割り振っていきます。

診療科名は医院名より目立たせてよい

初めてその前を通る人にとって、医院名そのものには意味がありません。知りたいのは「ここは歯医者なのか、小児科なのか」です。とくに歯科の看板では、医院名のデザインにこだわるあまり、「歯科」の文字が小さくなってしまう例が見られます。遠くから見る看板ほど、診療科名を大きく、はっきり読める書体にしておくと、必要としている人に見つけてもらいやすくなります。

夜と雨の日の見え方も確認する

夕方以降に診療がある医院では、暗くなってからの見え方も大切です。照明の入った看板か、外から照らす看板か、照明なしで済ませるかによって、夜の見え方は大きく変わります。デザイン案の段階で、昼の見え方だけで判断しないようにしましょう。また、背景と文字の色の組み合わせは、色の見え方に個人差があることも考えて、明るさの差がはっきりつく組み合わせを選ぶと読みやすくなります。

ポイント

デザイン案を確かめるときは、パソコンの画面で拡大して見るのではなく、実際に看板が立つ場所から見る距離を想定して、印刷した案を離れたところから眺めてみてください。スマートフォンで現地の写真を撮り、そこに案をはめ込んでもらうと、周囲の建物や他の看板に埋もれないかも確認できます。

医療広告ガイドラインで、看板に載せられる事項を確認する

医院の看板は、医療法上の「広告」に当たると考えられており、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」の対象になります。一般のお店の看板と同じ感覚でキャッチコピーを入れると、載せてはいけない表現が含まれてしまうおそれがあります。看板は一度つくると簡単には変えられないため、発注の前に確認しておくことが大切です。

載せる事項の確認表

医療法とガイドラインでは、広告できる事項が定められています。以下は看板でよく使われる情報の整理の一例です。実際に載せる文言は、必ず厚生労働省の医療広告ガイドラインと関連資料(Q&Aなど)で確認し、迷う場合は所管の保健所などに相談してください。

区分看板でよく使われる例確認したいこと
比較的使いやすい情報医院名、診療科名、住所、電話番号、診療日・診療時間、予約の有無、駐車場の有無診療科名が標榜できる名称になっているか。診療時間を変えたときに看板も直せるか
書き方に注意が必要な情報院長の経歴や資格、対応できる診療内容、設備の紹介ガイドラインで認められた範囲・書き方になっているか。「専門」などの言葉の使い方
載せない方がよい表現「地域No.1」「最高の治療」「痛くない」「必ず治る」などの最上級・比較・効果の断定比較優良広告・誇大広告・虚偽広告に当たらないか
扱いに慎重さが要る素材患者さんの体験談、治療前後の写真看板のような媒体では使わないのが無難。ガイドラインの記載を確認する
注意

看板以外の発信も含めた表現の注意点は、医療広告ガイドラインと歯科の発信で詳しく整理しています。ホームページや院内掲示と同じ言い回しを看板にも使う場合は、あわせて確認しておくと安心です。

野立て看板をクリニックで出すときの場所選びと手続き

幹線道路から少し入った場所や、住宅街の中にあるクリニックでは、野立て看板が「存在を知ってもらう」ための手段になります。ただし、野立て看板は自院の敷地の外に立てるものなので、場所選び・契約・許可と、敷地内の看板より考えることが増えます。

場所を選ぶときの見方

許可・契約で確認すること

屋外に看板を出す場合、多くの地域で屋外広告物法にもとづく都道府県や市区町村の条例が関係し、設置の許可や定期的な更新の手続きが必要になることがあります。景観に関する地域のルールで、大きさや色、照明が制限される場所もあります。具体的な基準や手続きは自治体によって異なるため、設置予定地を管轄する自治体の窓口で確認してください。

土地を借りて立てる場合は、地主との契約内容も大切です。契約期間、更新の条件、解約時に看板を撤去する費用をどちらが負担するか、看板が壊れたときや人に被害が出たときの責任の分担などを、書面で取り決めておきましょう。テナントビルの袖看板や屋上の看板も、ビルの管理規約で位置や大きさが決まっている場合があるため、物件の契約前に確認しておくと後で困りません。

野立て看板の確認メモ

医院の看板デザインの進め方と、よくある失敗

医院の看板デザインは、ロゴや医院のコンセプトが決まってから進めるのが基本です。ロゴが決まらないまま看板を先に作ると、ホームページや診察券、院内の掲示と見た目がそろわず、後で作り直しになることもあります。

発注までの手順

  1. 看板の一覧をつくる:ファサード・袖看板・自立看板・野立て看板・窓サイン・館内案内のうち、どれを作るかと、それぞれの役割を一覧にする
  2. 載せる情報を割り振る:第2節の優先順位にしたがって、看板ごとに載せる情報を決める
  3. 文言を確認する:医療広告ガイドラインと照らし合わせ、物件の管理規約や自治体のルールもあわせて確認する
  4. 業者に相談する:一覧と文言、物件の図面や現地写真を渡して、デザイン案と見積もりを依頼する
  5. 現地で確かめる:案を現地の写真にはめ込んだもので、距離・夜間・周囲との見え方を確認する
  6. 工程を合わせる:内装工事や開院の告知の時期に間に合うよう、製作・設置・許可の期間を逆算して決める

見積もりを比べるときの項目

看板の見積もりは、業者によって含まれる範囲が違います。金額だけを比べるのではなく、デザインの費用、製作の費用、取り付け工事の費用、照明の電気工事、許可申請の手続きの代行、将来の文字の貼り替えや修理への対応などが、どこまで含まれているかを並べて比べましょう。照明つきの看板は電気工事が別の業者になることもあるため、内装の工事業者とも事前に打ち合わせておくと手戻りが減ります。

よくある失敗

受付スタッフにも聞いてみる

開院後、「どこから入ればいいですか」「駐車場はどこですか」という電話が多いなら、看板の案内が足りていない合図かもしれません。問い合わせの内容を受付でメモしておき、窓サインや自立看板の表示を見直すきっかけにしましょう。

看板は入口まで、待合室はその先へ

看板の役割は、医院を見つけてもらい、入口まで迷わず来てもらうことです。けれども、患者さんが「この医院にまた来よう」と感じるかどうかは、入口をくぐった後の体験にかかっています。とくに歯科や小児科では、子ども連れの保護者が「ここなら子どもと来やすい」と思えるかどうかが大切です。そうした医院の雰囲気は、看板の文字だけでは伝えきれません。

子どもが「また描きたい」と思える待合室|アートパーク

当社の「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないので、消毒や片づけの手間もかかりません。作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはありません。その時間に居合わせた子どうしで一緒に泳ぐ仕組みで、楽しみは「また描きたい」です。お絵かきへの入口は、院内に置く紙のPOPで案内します。看板で入口まで来てもらった後、待ち時間を過ごしやすくする工夫の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

待合室のテレビの大画面を、子どもたちが描いた魚が泳いでいる実際の画面
アートパークの「すいぞくかん」の実際の画面
クリニックの看板 チェックリスト

まとめ

クリニックの看板は、ファサード・袖看板・自立看板・野立て看板・窓サインと種類ごとに見る人も見る距離も違います。まず役割を分け、遠くから見る看板ほど情報を絞り、診療科名と医院名をはっきり伝えることから始めましょう。看板は医療広告ガイドラインの対象になるため、載せる文言は発注の前に院長自身が確認し、屋外に出す看板は自治体のルールや契約もあわせて確かめておきます。看板で入口まで迷わず来てもらい、その先の待合室で「また来たい」と思ってもらう。その両方を開業準備の段階で考えておくと、開院後の手直しを減らせます。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。