クリニックの呼び出し方法を見直す|待合室での名前・番号・画面表示・個別案内の比較と、プライバシー・聞き逃しへの配慮
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クリニックの呼び出しは、毎日何十回も繰り返す、待合室でいちばん身近な業務です。「○○さん、どうぞ」と名前で呼ぶのか、受付番号で呼ぶのか、画面に表示するのか、スタッフが近くまで行って案内するのか。どの方法にも良さと弱点があり、患者さんのプライバシー、聞き逃し、子連れや高齢の方への配慮によって最適な形は変わります。この記事では、待合室での呼び出し方法を4つに分けて比較し、貴院に合った組み合わせの決め方、聞き逃しを減らす工夫、声かけの例、見直しのチェックリストまでをまとめました。院長・事務長の方に向けた内容です。
クリニックの呼び出し方法は4種類|それぞれの特徴を比較する
クリニックでの患者さんの呼び出し方法は、大きく分けると「名前で呼ぶ」「番号で呼ぶ」「画面に表示する」「スタッフが個別に案内する」の4つです。実際には、これらを組み合わせて使っている医院がほとんどです。まずは、それぞれの特徴を並べてみます。
| 呼び出し方法 | 良いところ | 弱いところ | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 名前で呼ぶ | 本人が気づきやすい。準備がいらず、取り違えに気づきやすい | 待合室にいる人に氏名が伝わる。同姓の方がいると紛らわしい | 患者さんが少ない時間帯、顔なじみの患者さんが多い医院 |
| 番号で呼ぶ | 氏名を口に出さずに済む。順番が分かりやすい | 番号を忘れる・聞き逃す方がいる。番号札や受付票の準備が必要 | 初診の方が多い、待合室が混み合う時間帯がある |
| 画面に表示する | 耳の聞こえにくい方にも伝わる。声を張らずに済み、待合室が静かになる | 画面を見ていない人は気づかない。機器の準備と運用の手間がかかる | 待合室が広い、番号での呼び出しと併用したい |
| 個別に案内する | 確実に伝わる。不安の強い方にも丁寧に対応できる | スタッフの手が取られる。混雑時は全員には続けにくい | 高齢の方、介助が必要な方、子連れの方、聞き逃しが続いた方 |
「1つに決める」より「基本+補助」で考える
呼び出し方法は、1つに統一すれば解決するものではありません。たとえば「基本は番号で呼び、画面にも表示する。反応がなければ近くまで行って声をかける」のように、基本の方法と補助の方法を組み合わせて考えると、どの患者さんにも届きやすくなります。大切なのは、スタッフによってやり方がばらばらにならないよう、医院としての手順を決めておくことです。
呼び出しは「呼ぶ前」と「呼んだ後」も含めて設計する
呼び出しの良し悪しは、呼ぶ瞬間だけでは決まりません。受付のときにどう呼ばれるかを伝えておくこと、呼んでも反応がないときにどうするか、診察室へどう誘導するかまでを一続きの流れとして考えると、聞き逃しや取り違えが起きにくくなります。受付まわりの設計全体については、クリニックの受付を見直すの記事もあわせてご覧ください。
プライバシーへの配慮|名前で呼ぶときに考えておきたいこと
名前で呼ぶ方法は、もっとも分かりやすい一方で、待合室にいるほかの患者さんに氏名が伝わります。地域の中で顔見知りが多い医院では、「あの人がこのクリニックに通っている」と知られることを気にする方もいます。診療科によっては、受診していること自体を周りに知られたくないと考える方もいるでしょう。
法令やガイダンスは一次資料で確認する
患者さんの呼び出し方と個人情報の扱いについては、個人情報保護法のほか、個人情報保護委員会と厚生労働省による医療・介護関係事業者向けのガイダンスや、そのQ&Aで考え方が示されています。名前で呼ぶこと自体の扱いや、患者さんから希望があったときの対応などについては、解釈を独自に判断せず、必ず最新の一次資料をご確認ください。院内の個人情報の取り扱い規程にも、呼び出しについての方針を書いておくと、スタッフが迷わずに済みます。
- この記事は運用の考え方を整理したもので、法令の解釈を示すものではありません。個人情報保護法や関連するガイダンスは改正・更新されることがあるため、個人情報保護委員会・厚生労働省の公表資料を直接ご確認ください。
- 判断に迷う場合は、医師会などの相談窓口や専門家に確認することをおすすめします。
名前で呼ぶ場合にできる配慮
名前で呼ぶ運用を続ける場合でも、少しの工夫で配慮の度合いを上げられます。
- 姓だけで呼ぶ:フルネームではなく「○○さま」と姓だけで呼ぶ。同姓の方がいるときだけ、受付番号や生年月日の確認で区別する
- 呼び方の希望を聞く:問診票や受付で「番号での呼び出しをご希望の方はお申し出ください」と案内し、希望をカルテや受付票に記録しておく
- 声の大きさを場面で変える:待合室全体に響く声ではなく、待合室の入り口まで出て、届く範囲の声で呼ぶ
- 病名や検査内容を一緒に言わない:「○○さん、採血のご案内です」のように、処置の内容を呼び出しに含めない
患者さんの名前を呼ぶ場面は呼び出しだけではない
見落としやすいのが、会計や次回予約、処方の説明など、呼び出し以外の場面です。受付カウンターで「○○さん、次は胃の検査ですね」と話すと、待合室にいる人に内容まで伝わることがあります。呼び出しを番号に変えても、受付での会話が筒抜けでは配慮の意味が薄れます。会計や説明の場面では、声の大きさや話す位置、書面で伝えられる内容は書面にするなどの工夫も一緒に見直しましょう。
番号・画面表示で呼ぶときの運用の決め方
番号で呼ぶ方法や、待合室の画面に番号を表示する方法は、氏名を口に出さずに済むため、プライバシーへの配慮として取り入れる医院が増えています。ただし、運用を決めずに始めると、かえって混乱を招くことがあります。
番号の渡し方と伝え方
待合室での呼び出しを番号に切り替えるときは、受付の時点で「この番号でお呼びします」とはっきり伝えることが出発点です。
- 番号札、受付票、診察券への記入など、患者さんの手元に番号が残る形で渡す
- 番号は大きく、見やすい字で書く。高齢の方にも読める大きさにする
- 「番号でお呼びします。画面にも表示されます」と、呼ばれ方を口頭で一言添える
- 予約の方と予約外の方で番号の系列を分ける場合は、順番が前後する理由を掲示しておく
番号での呼び出しで多い困りごとは、「自分の番号を忘れた」「順番が飛ばされたように感じた」の2つです。番号は手元に残る形で渡すこと、そして「診察の内容や予約の有無によって、番号の順にならないことがあります」と掲示しておくことで、多くの行き違いを防げます。
画面表示を使うときに決めておくこと
待合室の画面に呼び出し番号を表示する場合は、次のような点を事前に決めておきます。院内の画面を呼び出しや案内にどう使い分けるかは、クリニックのデジタルサイネージ活用ガイドでも整理しています。
| 決めておくこと | 考え方の例 |
|---|---|
| 何を表示するか | 番号だけにするか、「○番の方 診察室2へ」のように行き先も出すか。氏名は表示しない方針が基本になる |
| どこに置くか | 待合室のどの席からも見える位置か。受付や診察室の入口付近など、患者さんの視線が向きやすい場所か |
| 音と組み合わせるか | 表示が切り替わるときにチャイムを鳴らす、声でも番号を読み上げるなど、画面を見ていない人への手当て |
| 表示の残し方 | 呼んだ番号をしばらく表示し続けるか、すぐ消すか。聞き逃した方が後から気づけるよう、直近の番号を残す方法もある |
| 止まったときの対応 | 機器が動かないときは声での呼び出しに切り替える、と手順を決めておく |
画面に表示する内容には注意する
画面に表示する情報は、待合室にいる全員が見るものです。氏名はもちろん、診療科や検査の内容など、本人が周りに知られたくない可能性のある情報は表示しないようにしましょう。呼び出しの画面に医院のお知らせを流す場合は、表現が医療広告ガイドライン(厚生労働省)の考え方から外れていないかも確認しておくと安心です。
聞き逃しを減らす工夫|子連れ・高齢の方・耳の聞こえにくい方へ
どの呼び出し方法でも、一定の割合で聞き逃しは起こります。聞き逃した患者さんは「呼ばれていたのに気づかなかった」と気まずい思いをし、医院にとっても診療の流れが止まる原因になります。聞き逃しは「起こるもの」として、起きたときの手順まで決めておきましょう。
呼んでも反応がないときの手順を決める
呼んでも反応がないとき、スタッフが判断に迷うと、次の患者さんを呼ぶべきか待つべきかで流れが止まります。たとえば次のような手順を決めておくと、誰が対応しても同じ動きになります。
- 1回目で反応がなければ、少し間をおいてもう一度呼ぶ
- 2回目でも反応がなければ、スタッフが待合室に出て、受付時の記録(座っていた場所、付き添いの有無など)を頼りに探す
- 見つからなければ、次の方を先にご案内し、受付票に「呼び出し済み・不在」と記録する
- 戻ってきた方には責めずに声をかけ、なるべく早い順番でご案内する
子連れの方への配慮
小さな子どもと一緒の保護者は、子どもの相手をしながら呼び出しを待っています。子どもがぐずって待合室の外に出ていたり、授乳室やトイレにいたりして、呼び出しを聞き逃しやすい立場です。
- 受付のときに「お子さんと外に出られるときは、受付に一声かけてください」と伝えておく
- 授乳室やトイレにいるときは、順番が来たら後回しにして戻るのを待つ、などの決まりをつくる
- 子どもが患者の場合は、子どもの名前で呼ぶのか保護者に向けて呼ぶのか、医院として決めておく
- 待合室で子どもが落ち着いて過ごせると、保護者が呼び出しに気を向けやすくなる
高齢の方・耳の聞こえにくい方への配慮
耳が聞こえにくい方や、画面の文字が読みにくい方にとっては、声だけ・画面だけの呼び出しは届きにくいものです。受付のときに「呼ばれたことに気づきにくい」と申し出てもらえるよう案内しておき、申し出があった方は受付票に印をつけ、順番が来たらスタッフが近くまで行って案内します。座る場所を受付や診察室の近くにすすめることも、聞き逃しを防ぐ工夫の一つです。
声かけの例
| 場面 | 声かけの例 |
|---|---|
| 受付のとき | 「本日は番号でお呼びします。こちらの番号を、お名前の代わりにお持ちください。画面にも表示されます」 |
| 呼び方の希望を聞くとき | 「お呼び出しは番号とお名前、どちらがよろしいですか」 |
| 近くまで行って案内するとき | 「○番の方でいらっしゃいますか。お待たせしました。診察室へご案内します」 |
| 聞き逃して戻ってきた方へ | 「先ほどお呼びしたのですが、大丈夫です。次にご案内しますので、もう少しだけお待ちください」 |
| 子連れの方へ | 「お子さんと外に出られるときは、ひと声かけてください。戻られてからご案内します」 |

子どもが座って待てる待合室に|アートパークという選択肢
子連れの方の聞き逃しは、子どもが待ちきれずに動き回ることから起こる場合があります。当社の「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、消毒や片づけの手間もかかりません。
保護者がお子さんの隣に座ったまま一緒に絵を描いて待てるので、呼び出しの声や画面にも気を向けやすい環境をつくる工夫の一つになりうると考えています。描いた作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残ることはないため、呼ばれて途中で席を立っても困ることはありません。もちろん、聞き逃しをなくすことを約束するものではなく、呼び出しの手順と組み合わせてこそ意味があるものです。
貴院に合う呼び出し方法の選び方と、見直しの手順
どの呼び出し方法が合うかは、診療科、待合室の広さ、混み合う時間帯、患者さんの年齢層などによって変わります。いきなり仕組みを入れ替えるのではなく、今の困りごとを確かめてから決めると、無理のない見直しになります。
困りごとから考える
| よくある困りごと | 見直しの方向 |
|---|---|
| 名前で呼ぶことに抵抗を示す患者さんがいる | 呼び方の希望を聞く運用を入れる。番号での呼び出しを選べるようにする |
| 同姓の方が多く、取り違えが心配 | 番号の併用、診察室に入る前の本人確認(生年月日など)を手順にする |
| 聞き逃しが多い | 画面表示や直近番号の表示を加える。反応がないときの手順を決める |
| 待合室が騒がしく、声が届かない | 画面表示とチャイムの併用。子どもが落ち着いて過ごせる工夫を合わせて考える |
| スタッフによって呼び方が違う | 呼び出しの手順を一枚にまとめ、朝礼などで共有する |
見直しの進め方
- 今の状態を書き出す:誰が、どこから、どんな言葉で呼んでいるか。聞き逃しや取り違えはどのくらい起きているかを、1〜2週間ほど受付で記録してみる
- 患者さんの声を聞く:アンケートや受付での会話から、呼び出しについての意見を集める
- 基本の方法と補助の方法を決める:「基本は番号、反応がなければ近くまで行く」など、組み合わせを決める
- 手順書と掲示物をつくる:スタッフ向けの手順と、患者さん向けの「呼び出しについてのお知らせ」を用意する
- しばらく試して振り返る:始めてから一定期間後に、聞き逃しや問い合わせの変化を確かめ、手順を調整する
よくある失敗
- 説明なしで切り替える:ある日突然番号での呼び出しに変えると、長く通っている患者さんほど戸惑います。切り替えの前から掲示と口頭で案内しましょう。
- 番号にしたのに受付での会話はそのまま:会計や説明で氏名や内容を大きな声で話していては、配慮の意味が薄れます。
- 画面に頼り切る:画面を見ていない方、文字が読みにくい方には届きません。声や個別の案内も組み合わせます。
- 聞き逃した方を責める:「何度もお呼びしましたよ」という言い方は、患者さんに気まずい思いをさせます。次の案内に気持ちよくつなげましょう。
呼び出しを見直すチェックリスト
最後に、貴院の呼び出しを点検するためのチェックリストです。受付スタッフと一緒に確認してみてください。
- 呼び出しの基本の方法と補助の方法が、医院として決まっている
- スタッフによって呼び方がばらばらになっていない
- 受付のときに、どう呼ばれるかを患者さんに伝えている
- 名前での呼び出しを望まない方が、番号などを選べるようになっている
- 呼び方の希望を、受付票やカルテに記録している
- 呼び出しの言葉に、病名や検査内容を含めていない
- 会計や説明の場面でも、声の大きさや話す内容に配慮している
- 番号は、患者さんの手元に残る形で渡している
- 画面に氏名や診療内容を表示していない
- 番号の順にならないことがある理由を掲示している
- 呼んでも反応がないときの手順が決まっている
- 子連れの方、高齢の方、耳の聞こえにくい方への個別の案内の決まりがある
- 聞き逃して戻ってきた方を責めずに案内している
- 呼び出しと個人情報の扱いについて、一次資料を確認し、院内規程に方針を書いている
- 見直した後に、聞き逃しや問い合わせの変化を振り返っている
まとめ
クリニックの呼び出し方法には、名前で呼ぶ、番号で呼ぶ、画面に表示する、個別に案内するの4つがあり、それぞれに良さと弱点があります。大切なのは、1つの方法に頼るのではなく、基本の方法と補助の方法を組み合わせ、医院としての手順を決めておくことです。名前で呼ぶ場合は呼び方の希望を聞くなどプライバシーへの配慮を、番号や画面で呼ぶ場合は渡し方と表示内容の決まりを整えましょう。聞き逃しは起こるものとして、反応がないときの手順と、子連れ・高齢の方への個別の案内を用意しておくと安心です。個人情報の扱いについては、個人情報保護法や関係するガイダンスなどの一次資料を確認しながら、貴院に合った形に整えていきましょう。