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経営

歯科のキャンセル率を下げるには|無断キャンセル・当日キャンセルを減らす前日連絡と「変更しやすい」予約の運用

公開  | アートパーク編集部(株式会社NEVER)

夕方の明かりがともる歯科医院の受付と待合室。壁の大きなテレビに海の中の画面が映っている

※写真はイメージです。

予約の時間になっても患者さんが来ない。連絡もつかない。歯科医院にとって、無断キャンセルや当日キャンセルは、ユニットと担当者の時間がそのまま空いてしまう悩みの種です。とはいえ、患者さんの側にも、急な仕事や子どもの発熱など、どうにもならない事情があります。この記事では、歯科のキャンセル率を自院で正しく数える方法から、前日連絡の手段と文面、日程変更をしやすくする工夫、子どもの体調不良への配慮、空いた枠の埋め方、キャンセル料を検討するときの注意点までを、予約の前日と当日の運用に絞ってまとめました。院長・事務長の方に向けた内容です。

歯科のキャンセル率の数え方|まず自院の定義をそろえる

キャンセル対策を始める前に、貴院のキャンセル率を同じ物差しで測れるようにしておきましょう。「最近キャンセルが多い気がする」という感覚のままでは、手を打っても効いたのかどうかが分かりません。また、キャンセルとひとまとめに呼んでいるものの中には、性質のまったく違うものが混ざっています。

キャンセルを3種類に分ける

最低限、次の3つは分けて記録するのがおすすめです。前日までに連絡があって別の日に振り替えられたものは、医院にとっては「空き枠を埋め直す時間がある」キャンセルです。一方で、当日の連絡や連絡なしの欠席は、その枠がほぼ埋まらないまま終わります。

区分定義の例医院への影響
事前の変更・キャンセル前日の診療終了までに連絡があったもの(振替の有無も記録)空いた枠を別の患者さんで埋め直せる余地がある
当日キャンセル予約当日に連絡があったもの直前の枠ほど埋まりにくい。準備した器材や時間が無駄になる
無断キャンセル予約時刻を過ぎても来院がなく、連絡もなかったもの枠が埋まらないうえ、確認の電話などで受付の手間も増える

「前日の何時まで」を事前とするか、「予約時刻から何分過ぎたら」無断とみなすかは、医院ごとに決めて構いません。大切なのは、一度決めた定義を受付の全員で共有し、毎月同じ方法で数えることです。

計算式は分母と分子をはっきりさせる

キャンセル率は、たとえば次のように計算します。

分母を「来院した人数」にするか「予約件数」にするかで数字は変わります。どちらが正しいということはありませんが、途中で変えると比べられなくなります。業界の平均値や他院の数字と比べるより、貴院の先月・前年同月と比べる方が、打った手の効き目を判断しやすくなります。初診・再診・定期検診、大人・子ども、曜日・時間帯で分けて見ると、キャンセルが集中しているところが見えてきます。

予約システムがなくても記録はできる

予約システムに区分の項目がない場合は、紙の予約台帳に記号を決めて書き込み、月末に数えるだけでも十分です。「×=無断」「△=当日」「→=事前変更」のように、受付の誰が書いても同じになる記号にしておきましょう。

歯医者のキャンセルが起きる理由を分けて考える

歯医者のキャンセルは、理由によって効く手が違います。受付で聞き取れた理由をざっくり分類しておくと、どこに手を入れるべきかがはっきりします。

主な理由よくある状態効きやすい対策
忘れていた先の予約を取ったまま、日時を覚えていない前日・数日前の連絡、予約カードの見直し
予定が変わった仕事や家の用事が入った。連絡するのが面倒・気まずい変更しやすい窓口、変更の連絡を歓迎する姿勢
体調が悪い本人や子どもの発熱、体調不良連絡のしやすさ、振替の案内、来院を控える目安の共有
行く理由が弱い痛みが治まった、治療の続きの必要性が分かっていない次回に何をするのかを、予約のときに伝える
気が重い処置が怖い、前回つらかった、子どもが嫌がる処置内容と所要時間の説明、来院そのものの負担を減らす工夫

この中で、医院の工夫で最も減らしやすいのは「忘れていた」と「予定が変わったのに連絡しなかった」の2つです。体調不良はゼロにはできませんが、「連絡なし」を「事前の連絡」に変えることはできます。つまり、キャンセルそのものをなくすより、無断を連絡ありに、当日を前日までに移していく考え方が現実的です。

なお、痛みが治まったことで治療の途中に来なくなる方については、予約当日の運用だけでなく、説明の仕方や中断した方への連絡も関わってきます。定期検診の中断を防ぐ仕組みは歯科の定期検診を続けてもらうにはで詳しくまとめています。

前日連絡の設計|手段・タイミング・文面

予約の確認連絡は、無断キャンセル対策の基本です。ただし、手当たり次第に電話をかけると受付の負担が大きくなります。誰に・いつ・何で連絡するかを決めておきましょう。

手段ごとの向き・不向き

手段向いている場面気をつけたいこと
自動メール・SMS予約全件への前日の確認。変更用のリンクを添えられる送信元が分かる名前にする。届かない・見られないこともある
LINE子育て世代など日常的に使う方。返信や変更が気軽にできる友だち追加と連絡の了解が前提。送りすぎない
電話長い処置・初診・過去に無断があった方など、確実に確認したい予約受付の時間を使う。かける時間帯と話す内容を決めておく
予約カード・紙次回予約を取ったその場で渡す。冷蔵庫など家族の目に触れる場所に貼ってもらえるなくしやすい。変更の連絡先を大きく書く

タイミングは「前日」と「数日前」を使い分ける

前日の連絡は忘れ防止に効きますが、前日に予定が合わないと分かっても、空いた枠を埋め直す時間はあまり残りません。処置に時間のかかる予約や、先の日付で取った予約は、数日前にも一度確認すると、事前の変更で済む割合を増やせます。

文面の例

確認の文面は、日時と「変更の方法」を必ずセットにします。変更の方法が書かれていないと、予定が合わなくなった患者さんは連絡の手段を探す手間を嫌い、そのまま来ないという選択をしがちです。

前日連絡の文面例

○○歯科です。明日○月○日(○)○時のご予約を確認させてください。ご都合が悪くなった場合は、こちらのリンク、またはお電話(受付時間○時〜○時)で日程を変更できます。お子さまの体調がすぐれないときも、お気軽にご連絡ください。

最後の一文は、子どもの予約がある方に向けた一言です。体調不良での変更を「迷惑をかけること」ではなく「連絡してくれれば助かること」として伝えておくと、無断の欠席が減り、同時に体調の悪い子が無理に来院するのを防ぐことにもつながります。

電話で確認するときの声かけ

電話での確認は、責める調子にならないことが一番大切です。

注意

無断キャンセル対策の要は「変更しやすさ」

無断キャンセルの中には、「行けなくなったけれど、電話をかけるのが気まずい」「受付時間内に電話できない」という理由で連絡を諦めた方が少なからず含まれていると考えられます。予約を守ってもらうための厳しいルールより、変更の連絡をしやすくする方が、結果として無断を減らしやすくなります。

変更の窓口を増やし、時間外でも受け付ける

「変更の連絡」を歓迎する空気をつくる

変更の電話を受けた受付が、少しでも面倒そうな声を出すと、患者さんは次から連絡しにくくなります。変更の連絡には「ご連絡ありがとうございます」と必ず一言添え、その場で次の候補日を提案することを受付の決まりにしましょう。キャンセルの連絡が「振替の予約」に変われば、患者さんの治療も途切れずに済みます。

ポイント

キャンセルの電話を受けたら、理由を細かく聞く前に「次の日程」を決めることを優先します。理由は、患者さんが自分から話してくれた範囲で台帳にメモしておけば十分です。

よくある失敗

当日の運用|子どもの体調不良への配慮と空いた枠の扱い

小児の患者さんが多い医院では、当日キャンセルの中に子どもの発熱や体調不良が一定数含まれます。これは防ぐべきキャンセルではなく、むしろ「来院を控えてもらう方がよい」ケースです。医院として、体調不良のときの考え方を先に伝えておきましょう。

体調不良の目安と連絡方法を先に伝える

保護者の側には「当日に休むと迷惑をかける」という気兼ねがあり、少し無理をして連れてくることもあります。医院から「体調が悪いときは遠慮なく変更してください」と言ってもらえると、保護者は安心して連絡できます。

空いた枠を埋める仕組み

当日のキャンセルで空いた枠は、すべてを埋めることはできません。それでも、埋める手順を決めておくと、取りこぼしを減らせます。

方法やり方向いている場面
キャンセル待ちの名簿「早く来られる日があれば連絡がほしい」方を、希望の曜日・時間帯とともに記録しておく前日や当日の朝に分かった空き
院内での調整来院中の患者さんに、次回分の処置の前倒しや、ご家族の検診の追加を提案する直前に空いた短い枠
院内作業にあてる器材の整理、記録の整理、スタッフ間の打ち合わせなど、空いたときにやることを決めておくどうしても埋まらない枠

空き時間が出たときに何をするかを決めておくと、キャンセルによる「何もしない時間」を減らせます。予約の詰めすぎで待ち時間が延びている医院では、空いた枠がその日の遅れを取り戻す時間になることもあります。待ち時間の考え方は歯科・小児科の待ち時間対策でも整理しています。

待合室のベンチで、母親のスマートフォンを子どもと一緒にのぞき込み、魚の絵に色をぬっている様子
子どもが来院を嫌がらないことも、予約どおりに来てもらう条件の一つです。※写真はイメージです。

子どもが「行きたくない」と言わない工夫|アートパークという選択肢

保護者からの当日キャンセルの理由には、体調不良のほかに「子どもがぐずって連れて行けなかった」というものもあります。診療室での声かけに加え、待合室で過ごす時間を楽しいものにしておくことも、来院の気の重さを和らげる工夫の一つです。当社の「アートパーク」は、待合室のテレビ1台で、お子さんが親御さんのスマートフォンで描いた魚などの絵が、大画面の水槽「すいぞくかん」を泳ぎだすサービスです。アプリのインストールや会員登録は不要で、お子さんの氏名・顔写真・生年月日は取得しません。共有のおもちゃやタッチパネルを置かないため、消毒や片づけの手間もかかりません。作品は5分ほど(最長10分)で画面から退場し、日をまたいで残らないので、その時間に居合わせた子どうしで一緒に泳ぐ楽しみ、そして「また描きたい」という気持ちが生まれます。お絵かき画面には、予約フォームや公式LINEへの案内を1回だけ表示できるため(全員に同じ案内)、日程変更の窓口を知ってもらう場面にも使えます。キャンセルを減らすことを約束するものではなく、連絡や受付の運用と組み合わせてこそ意味がある工夫です。

繰り返す方への対応とキャンセル料の注意点、見直しチェックリスト

連絡しやすい仕組みを整えることが、予約を守ってもらうための土台になります。一方で、無断キャンセルを何度も繰り返す方がいるのも事実です。対応は、感情ではなく院内で決めたルールに沿って、誰が受付にいても同じになるようにしておきます。

段階を決めて対応する

治療の途中で来なくなっている方には、予約の扱いとは別に、治療を続ける必要性をあらためて説明することも検討してください。対応の記録は台帳に残し、担当者が替わっても引き継げるようにします。

キャンセル料は慎重に検討する

無断キャンセルへの対策として、キャンセル料の徴収を考える医院もあります。ただし、保険診療を行う医療機関が患者さんから費用を受け取ることには、保険診療との関係で取り扱いに注意が必要な論点があります。

注意

数字の振り返り方

月に一度、第1節で決めた区分ごとのキャンセル率を出し、前月・前年同月と比べます。前日連絡を始めた月、Webでの変更を受け付け始めた月など、運用を変えた時期を台帳にメモしておくと、どの手が効いたのかを後から確かめられます。経営の数字全体の見方は歯科医院の経営を数字で見る基本もあわせてご覧ください。

チェックリスト

まとめ

歯科のキャンセル率を下げる第一歩は、事前の変更・当日キャンセル・無断キャンセルを分けて、自院の定義で毎月同じように数えることです。そのうえで、予約の前日と数日前に日時と変更方法をセットで伝え、電話以外でも変更できる窓口を用意し、変更の連絡を歓迎する受付の姿勢をつくります。子どもの体調不良は防ぐべきキャンセルではないため、早めに連絡してもらえるよう先に伝えておきましょう。空いた枠はキャンセル待ちや院内作業で生かし、繰り返す方には段階を決めて対応します。キャンセル料については保険診療との関係があるため、検討する際は必ず地方厚生(支)局などに確認してください。無断を連絡ありに、当日を前日までに。その積み重ねが、予約どおりに来てもらえる医院づくりにつながります。

アートパーク編集部(株式会社NEVER)
歯科・小児科の待合室向けに、子どもが描いた絵がテレビの大画面で泳ぐ「アートパーク」を開発・提供しています。愛知県豊川市。